岡山市は新年度から部活動の朝練を廃止するなど「教員の働き方改革」について取り組みを進めています。長時間労働を背景に退職した若手教員や、現役の校長の声などから今後の学校教育の在り方について考えます。
上限の月45時間を大きく上回る岡山市の中学校教員の平均残業時間…
(岡山市立中学校の元教員/田中さん[20代])
「岡山市は午後5時が定時だったが、でも部活は6時まで。定時過ぎても『申し訳ない』『すみません』と言って帰らないといけなかった」
岡山市の公立中学校で教員をしていた田中さん(仮名・20代)。田中さんは岡山市の教員時代、部活動に加え、授業の準備などで夜遅くや休日も学校にいることが多かったと話します。
(岡山市立中学校の元教員/田中さん[20代])
「教員の仕事はゴールがない。夜の10時、11時、日をまたぐこともあったが、そこまでして準備をして、ちょっとできていないところをさぼっているように見られた時があって、すごくしんどかった」
岡山市教育委員会によりますと2022年度の市の公立中学校の教員の平均残業時間は56.6時間で、労働基準法で定められた、原則月45時間の上限を大きく上回っていました。
市教委は業務の効率化などに取り組み、2025年度は初めて平均では月45時間を下回りましたが、現在も教員の4割ほどが超えているとみられています。
(岡山市教育委員会 教育給与課/若狹暢宏 参事)
「長時間勤務の解消には至っていない。したがってそういった課題がある以上、新しい推進方針をつくってさらに取り組んでいく」
課題は教員の「部活動への関わり方」が大きな 新年度から朝練を廃止に…
市教委は3月、2029年度までにすべての教員の残業時間を45時間以下とする数値目標を掲げました。この目標の達成に向け大きな課題の一つが教員の「部活動への関わり方」です。
市教委が2025年度実施した中学校教員へのアンケートでは、日常的に負担感・多忙感が大きい業務として最も回答が多かったのが「部活動・クラブ活動等」で、約47%に上っています。こうした中、市教委は、教員の長時間労働の抑制や生徒の睡眠時間の確保を目的に、部活動の朝練を新年度から廃止することを決めました。
さらに市は、休日の部活動を2031年9月までに廃止し、地域で受け皿を確保する方針を打ち出しました。平日の地域展開についても可能なところから取り組むとしています。
(岡山市/大森雅夫 市長)
「大きな面で時代は変わってきている。相当負担に思われている人が多いのは事実。代替手段を整備していくことも重要」
部活動の地域移行に懸念の声も
一方で、部活動の受け皿を地域クラブに移していくことで、子どもの活動機会を十分に確保できるのか、懸念の声もあがっています。
(桑田中学校/井上英次 校長)
「文化的な部分についてがなかなか難しいところ。特に吹奏楽について言えば楽器があるので、学校に。楽器があるからできているところを地域にとなったときになかなか難しいところがあると感じる」
岡山県中学校体育連盟の会長も務めている井上校長。今後、地域クラブへの移行が進み、教員が関わらなくなると、中体連の大会運営などにも影響が出る可能性があると指摘します。
(桑田中学校/井上英次 校長)
「先生方の手から全部を離してしまったら、たぶん後戻りはできないので、また先生やってくださいねとはできなくなると思うので、持続可能な形でできるシステムをつくらないと難しい」
教員の働き方改革と子どもの活動機会の確保、これら2つを両立できるのか。名古屋大学教育学部の内田良教授は、学校教育の在り方そのものから見直す必要があると指摘します。
(名古屋大学教育学部/内田良 教授)
「学校がいろんなことを背負いすぎてきた最たるものが部活動。放課後というのは、家庭なり、地域社会なりが子どもを受け入れている時間帯のはずなのに、それを学校が丸ごと背負ってきたここをゼロベースで見直して、家庭がどうか、自治体がどう関われるか、あるいは企業がどう関われるか、日本社会全体の課題として受け止めていくべき」
「選ばれる職場」になるためにも働き方改革の推進が重要
内田教授は、教員不足が課題となる中、選ばれる職場になるためにも、働き方改革の推進が重要だと話します。
(名古屋大学教育学部/内田良 教授)
「長時間労働がどれくらいあるか、あるいは削減されているかを見ながら自分の働く自治体を選んでいるという話を聞くようになってきた。実は部活動の在り方、長時間労働の在り方がこれからの教員採用にも関わってくると思う」
岡山市の公立中学校で教員をしていた田中さん(仮名・20代)も労働環境を重視して別の自治体に転職しました。現在は、部活動の廃止が進む県外の公立中学校で働き、その違いを実感しています。
(岡山市立中学校の元教員/田中さん[20代])
「正直今は、5時台、6時台。6時台にはほとんど人がいない。学校の特色かもしれないがすごくやりやすい」
田中さんは、ゆかりのある岡山に「戻る」選択肢もあるものの、現状の働き方では難しいと話します。
(岡山市立中学校の元教員/田中さん[20代])
「いまの自治体を一回経験しているから、正直岡山には戻りたいと思えない。部活も完全に平日なくなってほしいとまでは求めないにしても、定時には最低限終わってほしい」
教員の「働きやすい」環境づくりが、社会全体に求められています。