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【特集】分身ロボットで切り拓く未来 難病を患う岡山在住の女性が東京のカフェ店員に

 筋力が徐々に低下していく難病を患う、岡山県吉備中央町の女性。「分身ロボット」を使ってカフェで働き、自分の世界を広げています。

 岡山県吉備中央町に住む、干場文華(ほしば・あやか)さん。体の筋力が徐々に低下していく難病「脊髄性筋萎縮症」を患っています。

(干場文華さん[23])
「寝た状態だと、こっちの左手はまだ手首が動かせるんですけど、他のところは自分で動かすことはできない」

 食事や入浴など日常生活で、さまざまな介助を必要とする干場さんですが……

(干場文華さん)
「接客だったり、お客様とお話をしたり、カフェの店員のような仕事をしています」

 4年半ほど前から、東京のカフェでアルバイトをしているといいます。

ロボットを遠隔操作してカフェで働く

(干場文華さん[英語で接客])
「8番と10番がヴィーガンの人向けのメニューです」

 カフェのお客さんは、8割ほどが外国人だそうで……

お客さん「日本に来たのは初めてです」
干場さん「そうですか、ようこそ日本へ!」

 英語で注文を聞いたり、接客をしたり……てきぱきと仕事をこなしていきます。

(干場文華さん)
「自宅の部屋からカフェにつながっているんですけど、自分の関係性や世界が広がっていく感覚があって、いろんな方に出会えたり、つながれたりすることもすごくうれしい」

 干場さんが働いているカフェはどんな場所なのか? 東京の店を訪ねてみると、出迎えてくれたのは、なんと、ロボットです。

 東京都中央区にある「DAWN ver.β」。病気や障害、家族の介護などさまざまな理由で「移動困難」な人が「OriHime」という分身ロボットを遠隔操作して働いているカフェです。

 干場さんはここで、分身ロボットのパイロット「Moon」として、配膳や接客などの仕事をしています。

(干場文華さん[英語で接客]) 
「こんにちは、ご来店ありがとうございます。ようこそDAWNへ。私はMoonです。初めまして」

 続いては、アメリカからやってきたお客さんのテーブルへ。

干場さん「このロボットはAIではありません。私は岡山出身です。岡山は知っていますか?」
お客さん「知りません」
干場さん「岡山は大阪の近くで、広島の隣です。私は自宅からリモートで働いています」

 YouTubeの動画で分身ロボットを知ったという男の子も。

男の子「デザートは何が好き?」
干場さん「私はプリンが好きです。あなたはプリンが好きですか?」
男の子「僕もプリンが好き」

(男の子)
「とても楽しかった。ロボットと話ができるのはとてもかっこいいと思って、そのために来たんだよ」

(お客さん)
「とてもおもしろかった。ロボットの向こうに人がいて、会話もできました。(AIとは違って)人間同士のやりとりができて、とても楽しく、他にはない体験でした」

(干場文華さん)
「お客さんに『ありがとう』とかうれしいお言葉をいただくと、『ここで頑張っている自分がいるんだ』ということを感じて、必要とされていると思う時がすごくやりがいを感じる部分です」

「自分の役割を得られることがうれしかった」

 2歳で「脊髄性筋萎縮症」と診断を受けた干場さん。中学生の時には、気管切開や人工呼吸器が必要になった時期もありました。

 カフェの仕事に出会ったのは、支援学校の高等部を卒業した頃です。

(干場文華さん)
「就職や進学を見つけられない状態で卒業したんですけど、主治医の先生からカフェのお話を教えてもらって、普段の生活になると自分でできることが少なかったり、支えてもらったりすることが多いので、働くことで自分の役割を得られることがすごくうれしかった。もともとカフェで働きたいというあこがれもあったので、自分にできることがあるんだったら挑戦してみようと思って」

干場文華さん「私は難病なので、自分の体で動くことは難しいです。でも、こんなふうにここで働いて、とても楽しんでいます」
お客さん「Moonさん、あなたは世界中に友達がいるんですね」

挑戦を見守る家族

 一緒に暮らす家族も干場さんの挑戦を見守っています。

(干場文華さんの父/充行さん)
「彼女らしい、いい感じだと思います。頑張って方向性を見つけてやっていけたらいいと思います」

(干場文華さんの弟/由太さん)
「いろんな人とコミュニケーションがとれて、すごくいい仕事だと思う。お客さんを喜ばせる力も持っているのでそれがすごいと思います」

(干場文華さんの母/恵美子さん)
「すごく朗らかに、間近で誰かとしゃべっているような、彼女らしく生き生きとしているなというのを感じます」

 干場さんには、同じ病気の兄、慎也さんがいます。慎也さんは、福祉のサポートを受けながら、東京で1人暮らしをしています。

(干場文華さん)
「兄もリモートで仕事をしているんですけど、楽しいこととかいいことだけじゃないっていうのはあって、その中でも自分の最善の選択をしていることはすごくかっこいいと思うし、尊敬しているところです」

移動困難な人たちが生き生きと働ける社会へ

 現在、このカフェでは、約100人のパイロットが働いています。手掛けているのは、分身ロボット「OriHime」の開発者でもある吉藤オリィさんです。

(オリィ研究所/吉藤オリィさん)
「今の世の中は基本的に体が動くことが前提にデザインされていると思っていて、それを変えていきたいという思いが強いです。一番大事なことは、ここは障害者が働くカフェではない。体を動かすことが難しい、移動困難な人たちが、こういった遠隔のもう1つの体を使って、接客を行うことで、家にいながら、入院しながらでも社会の参加を実現することができないか、そういったことを研究しているのがこのカフェです。ここで働くメンバーたちは、その先駆者になって、体を動かすことができなくなった先の、自分が生き生きと働ける方法、それのモデルになっていただければ」

一緒に働く仲間が大きな支えに

(北海道在住の同僚/けいさん)
「Moonちゃんがいたから早く入ってきちゃった」

 干場さんに話しかけたのは、北海道在住の同僚、「けい」さん。OriHimeを使って、プライベートでも交流があるそうです。

(北海道在住の同僚/けいさん)
「(干場さんは)ほんわりと優しくてすごくしっかりしてるんです。すごく頼もしいなって思っています。毎日のようにこうやってお仕事をしたり、プライベートで関わったりすることで、実際の距離を感じない」

(干場文華さん)
「病気があることで、感じる孤独感やつらさみたいなものはあります。(仕事は)ビタミンでもあり、痛み止めのような感覚で、実際だといろんな人とつながる機会を得ることが難しいけど、一緒に働いている仲間がいることも自分にとって大きな支えになっているし、孤独感を少し和らげてくれる」

 カフェで働き始めるまでは、引っ込み思案で人と話すのが苦手だったという干場さん。2025年12月には地元のイベントで体験を語り、自分の可能性を広げ続けています。

(干場文華さん)
「自分にできることを模索してさまざまな挑戦をしていきたいと思っていて、東京で1人暮らしをしたいという目標があるんですけど、まずはその1歩として岡山県内で自立した生活を目指したいと思っています」

KSB 報道
執筆:KSB報道
岡山・香川エリアを中心に日々ニュースを取材、発信しています。
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