石破総理は、トランプ大統領と初会談を行い「良い結果となった」と成果を強調しました。何がトランプ大統領に刺さったのか。 ■“共感”示す総理・「忘れ去られた人」
(千々岩森生記者)「石破総理を乗せた車がホワイトハウスに到着しました。この後、トランプ大統領との首脳会談が始まります。」 「日米関係の新たな黄金時代を追求する」との共同声明を発表した日米首脳会談。その冒頭、トランプ大統領が石破総理の言葉に、大きくうなずく場面がありました。 (石破茂総理大臣)「大統領閣下が『メイク・アメリカ・グレート・アゲイン』とおっしゃっておられますが、それは忘れ去られた人々、忘れられた人々に対する深い思いやりに基づくものだと思います。」 “忘れ去られた人々”。それはラストベルト=さびついた工業地帯に住む、経済発展から取り残された人たちのこと。トランプ大統領の支持者層になぞらえ、石破総理は自身の思いを伝えました。 (石破茂総理大臣)「私も総理大臣を就任して以来、“地方創生”ということを重ねております。それは日本の中には地方を中心として忘れ去られている、寂しい思いを持った人がたくさんいます。そういう人たち、もう一度、夢と希望を持ってもらいたい。」 トランプ大統領への“共感”を示した石破総理。今回の会談には、何度も勉強会を開き、入念なトランプ対策をして臨みました。 ■“150兆円”投資をトランプ氏歓迎
(石破茂総理大臣)「豊田章男氏は私の高校・大学時代の同級生、友人でありますが、トヨタ自動車は合衆国の工場を拡張する、あるいは新設をするという計画を持って近々実行いたします。」 持ち出したのは、トヨタの豊田会長の話。政府関係者によると、訪米前に秘密裏に面会して、準備を重ねたそうです。 (トランプ大統領)「彼らのような企業が成功すると確信している。豊田氏によろしく伝えてほしい。」 石破総理は対米投資額を1兆ドル、日本円で約150兆円規模に引き上げると表明。さらに液化天然ガスの日本への輸入を拡大することも約束しました。 ■USスチール・“買収→投資” 日本が提示
日本製鉄によるUSスチールの買収でも、新たな動きが―。 (トランプ大統領)「彼らは買収ではなく、“投資”をする。買収されたくなかったが、“投資”は大好きだ。」 (石破茂総理大臣)「今大統領から言及がありましたように“買収ではない投資”なのだと。」 実は、この「買収ではなく投資」だとする修正案、政府関係者によると、石破総理からトランプ大統領に提示したものだと言います。会見では、この“投資”の詳細について説明はなく、トランプ大統領は「来週、日本製鉄のトップと会談し、調停と調整を行う」という考えを示しています。 ■“相互関税”で貿易赤字を解決か
ただトランプ大統領は、日本のアメリカ経済への貢献を認めつつも、対日貿易赤字への指摘は忘れません。 (トランプ大統領)「日本との貿易赤字は1000億ドル(約15兆円)を超えているが、それを解決する。」 Q.日本に関税を課す予定は? (トランプ大統領)「関税は“相互関税”になる。私が言っている“相互関税”とは、高い関税に高い関税で応じることだ。」 “相互関税”とは、貿易相手国がアメリカからの輸入品に課しているのと同様の関税を、その貿易相手国にも課す措置だとみられます。ただ日本政府の関係者からはこんな声も―。 (政府関係者)「“相互関税”と言っているから、日本は全然問題なさそうだ。日本はそもそも農産品以外に関税をほとんど課していない。」 トランプ大統領は、この“相互関税”については、10日、または11日にあらためて発表するとしています。 ■中国 ネット通販・狙い打ち「会社潰れる」
“トランプ関税”の影響がすでに出始めている国もあります。中国・広州市の番禺地区です。 (井上桂太朗記者)「こちらは布がかなり置いてありますね。色んな種類の布が置いてあります。奥ではミシンの音も聞こえます。こちらまさに今、洋服でしょうか、作る作業をしています。」 ここは通称「SHEIN(シーイン)村」。SHEINとは、世界の若者から支持を集め、急成長する中国発のファストファッションサイト。ここでは多くの工場がSHEINと契約を結んでいて、アメリカを中心に150カ国以上に商品が発送されているといいます。 中国からの輸入品に10%の追加関税を課す大統領令に署名したトランプ大統領。これまでSHEINなど小口のネット通販は関税を免除されてきましたが、これも撤廃する方針です。SHEINなどと取引をしている経営者は―。 (SHEINなどと取引する経営者)「彼(トランプ大統領)がそういうことをすると、私たちのような貿易業者がたくさん潰れます。注文数が昨年の同時期に比べ70%減っています。今注文するのは怖いのです。」 “トランプ関税”の影響は甚大だと言います。 (SHEINなどと取引する経営者)「今回、トランプ大統領は一気に政策を打ち出しました。強硬すぎてその衝撃を緩和させる時間を与えてくれませんでした。だから今はとても厳しいのです。どうしようもないのです。国内向けに戻り競争に加わるしかない。どうしようもないのです。」 中国・商務省は―。 (中国 商務省の会見)「一方的ないじめに対しては必要な措置をしっかり講じ、自らの利益を断固守る」 ■石破総理「報復関税」の問いに…
穏やかな雰囲気で進んだ日米首脳会談でも、共同会見の最後に関税をめぐってこんな質問が―。 Q.アメリカが日本に関税をかけたら、報復しますか? (石破茂総理大臣)「『仮定のご質問にお答えをいたしかねます』というのが日本のだいたい定番の国会答弁でございます。」 (トランプ大統領)「素晴らしい回答ですね。とても良い答えだ。とても良い。」 日米間でも火種となりかねない関税問題に石破総理は正面からは答えることはありませんでした。 2月9日『有働Times』より