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【解説】岡山・総社市の人口増加率は中国地方トップ “3つの理由”とは

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 2015年から2020年にかけての総社市の人口の増加率は3.3%で、中国地方の市ではトップの増加率でした。なぜこんなにも増えているのか、その秘密に迫ります。

 総社市の人口は2005年の合併時は6万7707人でした。2011年以降は徐々に増えていて、2022年1月末の時点では6万9766人となっています。

 2020年の国勢調査によりますと岡山県内で5年前より人口が増えたのは、総社市の他は岡山市と早島町、里庄町だけで、増加率は総社市がトップです。

 人口増加の理由について総社市は主に3つをあげています。

人口増加の理由①「企業誘致」

(総社市/片岡聡一 市長)
「特に企業誘致には力を入れてきました。食品メーカー、それから、地域性・拠点性を生かしたデリバリーセンター、そういったものが功を奏している」

 高速道路のインターチェンジが市の中心部の近くにあり、工業地の価格も2021年の地価公示によると1平方メートルあたり1万8000円で岡山市の約半額となっています。そのため、この10年間で物流施設や鮮度が求められる食品メーカーなどの進出が相次いでいます。

 全国で約130の物流施設を運営する「日本GLP」もその1つです。
 2022年の春には3つ目の施設が完成し、新たに100人の雇用を見込んでいるということです。

(日本GLP/帖佐義之 社長)
「大阪や広島に比べて土地代が約半分や3分の1と安価。物流は社会インフラ。災害が起きようが何が起きようが寸断されてはいけないライフライン。稼働が止まるリスクが極めて少ない岡山県、その中でも総社市の立地条件が特に優れていた」

人口増加の理由②「障害者雇用の推進」

(「のぞみ」で勤務/砂田澪奈さん)
「マスクが大好きなので、『のぞみ』で働きたいと自分で思った」

 総社市の就労継続支援A型事業所「のぞみ」で勤務する砂田澪奈さん(22)。
 倉敷市に住んでいた砂田さんは総社デニムマスク作りのために2021年5月にこの事業所で働き始め、2021年11月からは、総社市に移り住んでいます。

(「のぞみ」で勤務/砂田澪奈さん)
「生活は、グループホームのみんなと一緒に話したりするのが一番楽しい」

 総社市は企業と障害者のマッチングを行っていて、市の障害者雇用は2011年は180人でしたが、2021年11月末時点で1208人となっています。

人口増加の理由③「子育て支援」

 総社市は「子育て大国そうじゃ」を掲げていて、0歳から3歳までの子どもと親が交流できる「つどいの広場」を設置しています。

 医療費は、小学生以下は無料。中学生は、外来は自己負担が1割、入院は無料です。

(利用者は―)
「けっこう助かっている。穏やかに過ごせると感じる」
「全て総社市内で買い物もできるし、子どもが集まれる場所がすごく多くてすごく良かった」

 女性1人が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、2019年が1.66で、全国平均1.36を0.3ポイント上回っています。

総社市と他の自治体の“違い”とは

 総社市のように人口を増やそうと、子育て支援は他の自治体でも率先して行われています。

 例えば、子どもの医療費は岡山県内では15の市町村で原則18歳まで無料としていますが、人口増加に結びついているとは言い難い状況です。

 地方創生政策に詳しい専門家は、「総社市は市の課題について住民からのヒアリングを他の自治体以上に行っていて、住民の満足度も高いことが人口の増加につながっているのではないか」と分析しています。

 一方で2020年の国勢調査によると、岡山県の人口は5年前と比べて約3万3000人減って約188万8400人となっていて、今後も人口減少が続くと予測されています。人口が減ると税収も減り、介護や育児などの行政サービスやインフラ整備などに影響が出る恐れがあります。

 では地方自治体は、今後どうすればいいのでしょうか。

(日本政策投資銀行 岡山事務所/小林貴史 所長)
「いわゆるカニバリゼーション(共食い)というものを、いかに避けるかというのを政策推進上も強く意識して進めていく必要がある」

 専門家は岡山県全体として人口が減ることは避けられず、自治体が移住者を取り合うのでなく、もっと大きな視点が必要だと話します。

 具体的には、医療や教育の分野などで自治体同士が連携しデジタル化を進めることが重要だと話します。

(日本政策投資銀行 岡山事務所/小林貴史 所長)
「サービス水準の向上とコストの削減を両立していくシステムソフトウェアを組み上げる。コストが掛かることなので1つの自治体だけでなくて、まとまった単位で他の自治体との連携、協調しながら進めていく取り組みが求められる」

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