14日に開幕する瀬戸内国際芸術祭。主な会場は、高齢者が多く医療体制が整っていない離島です。会場の島々はそれぞれの思いをもって開幕を迎えます。
(香川県 瀬戸内国際芸術祭推進課/合田健さん)
「人との交流というのは続けていかなければいけないなと。長い目で見たら、島を知ってもらうという活動を止めずに続けていくことが瀬戸芸の使命」
初めて新型コロナ禍で開催される瀬戸内国際芸術祭。香川県はそれぞれの島の実情に応じた適切な対策を取るとしています。では、会場となるそれぞれの島の思いは……。
「大島」は人数制限して受け入れ
(大島青松園自治会/野村宏 副会長)
「高齢者ばかりですからね。みんな持病を持っているものですから、コロナが来たらひとたまりもないということで入所者の外出は禁止されているし、買い物にも出ていけない」
島全体がハンセン病の国立療養所となっている大島には、現在、入所者と一部の職員が住んでいます。4月1日時点の入所者は40人。平均年齢は85.7歳です。
新型コロナの影響で制限していた一般の人の入島を各便50人に限って受け入れることを決めました。ただし、入所者との面会や施設の見学は原則できません。
(大島青松園自治会/野村宏 副会長)
「納骨堂には2100人余りの人が眠っておるでしょ。そういう人たちが長い間隔離されて収容されて、そして苦しい思いをして亡くなった人たちが、あの上で眠っているんですね。そういうことを分かってもらえたら一番ありがたい。みんなで一生懸命、職員の人も一緒になって園内の清掃したりして来てもらえるように頑張っている」
「豊島」は急患の搬送に懸念
人口750人ほどの豊島。高齢化率は50%を超えています。病院はなく、常駐する医師はいませんが、前回の瀬戸芸では約14万人が訪れました。
豊島で懸念されているのは、普段、自治会や消防団などが担っている急患の搬送です。
(豊島自治連合会/木村益雄 会長)
「自治会としても住民さんの安全が一番ですから、島民さんは別として、島外の方に対してはちょっと無理だなと。やはり誰もそこで転んでいたらほっとくかと言ったらなかなか難しいところはあるんですけど。しんどいところはあるんですけど、コロナがなかったらなぁ」
豊島自治連合会は、瀬戸芸開催に不安を感じていること、観光客の救急搬送には対応できないことを実行委員会に通知しました。土庄町と調整した結果、救急搬送については救急救命士の消防職員OB 2人を配置して対応することになりました。
瀬戸芸を通して各時代の課題に直面してきた「男木島」
(男木地区連合自治会/畠中廣司 会長)
「観光の面では、鬼の洞窟を目玉にして観光をしようっていうのが女木島。男木は『人が来るから観光地だろう』程度だね」
春会期には10の作品が展示される男木島。多くの作品が家々が並ぶエリアに置かれていて、島の暮らしを間近に感じられることが魅力です。一方、島民との距離が近いからこそ、島は配慮を求めています。
(男木地区連合自治会/畠中廣司 会長)
「田舎に来るっていうのは田舎の人としゃべる面白さを求めている人も多いと思うんですけれど、コロナ禍ではその辺は自粛してほしいなと思う」
瀬戸芸をきっかけに男木島にUターンした福井大和さんは、島が瀬戸芸を通して各時代の課題に直面してきたと考えています。
(男木地区コミュニティ協議会/福井大和 会長)
「2010年から2013年ていうのは『過疎』。学校の休校から再開ってなったと思うんですね。そこから2016年から2019年にかけては今度は『インバウンド』。本当に世界中から人がやってくるという状況が生まれて、そのあとに人が来すぎることがゆえの『オーバーツーリズム』っていう課題が2019年くらいまであった。そこから3年は『コロナ』。それこそ完全に閉じてしまうこともできたとしても、3年間起こらないというような状況が島の衰退を招くのではないかであったり、インフラを維持するということも非常に大事なので、そういったことのバランスっていうのが……。だからぜひ、この課題をみんなで克服できるいい機会になればいいなと思っています」