Park KSBアプリに皆さんから寄せられた疑問をもとにお伝えする「みんなのハテナ」。今回は「学校のプール」に関するハテナです。
6月に入り、岡山・香川の学校ではプールの授業が始まっています。
(太田南小学校の6年生は―)
「3年生までもともと習っていたので、結構得意ですね」
「苦手だなっていう子も友達の中でいたりします。『水は怖い』って言っています」
そんな学校のプールについての疑問が……。
「なんで水泳を授業にしたの?」(倉敷市 とっとこ 38歳)
学校のプールのルーツの一つは江戸時代、武士の子どもが学ぶ「藩校」にあった「水練場」だとされています。
山口県萩市の明倫館に1849年に造られた「水練池」は、現存する最も古い「水練場」です。
萩市によると、明倫館の「水練池」では主に遊泳術や水中騎馬など戦で生き残るための訓練をしたとされています。
さらに、日本の水泳学習について研究する国際武道大学の土居陽治郎教授は、日本の学校で本格的に水泳の授業が広まったきっかけに瀬戸内海で起きた一つの事故をあげます。
それが、連絡船「紫雲丸」の沈没事故です。
1955年5月11日、高松と宇野を結ぶ旧国鉄の連絡船「紫雲丸」は修学旅行の小中学生らを乗せて濃霧の高松港を出発しました。そのわずか16分後、女木島の近くで貨物船と衝突し、小中学生ら168人が犠牲になりました。
土居教授によると、当時「紫雲丸」の事故など子どもたちの水難事故が相次いだことから、「子どもに泳ぐ力を」という機運が高まったということです。
そして、1968年に改訂された学習指導要領で「水泳」が盛り込まれ、体育の授業として取り組まれることになりました。
ちなみに土居教授によると、この学習指導要領の改訂で各地の学校でプールの建設ラッシュが始まったということです。
そんな学校プールの設備についての疑問が……。
「最近は腰洗い槽や目洗い場が無いと聞きましたが、いつから変わったの?」(岡山市 かっちゃん 57歳)
冷た~い水が少し苦手だった人もいるのではないでしょうか。
そもそも腰洗い槽は、塩素を含む水で主に下半身まわりの有害な菌を殺すことで感染症を予防するための設備です。昔の学校のプールはろ過装置が不十分だったため、腰洗い槽での消毒が必要でした。
しかし、時代が進み、循環ろ過装置を備えたプールが全国的に普及したことで、厚生労働省はろ過装置による浄化を前提として、2001年に腰洗い槽の設置に関するガイドラインを削除しました。
これにより、多くの学校では腰洗い槽による消毒が必要ではなくなりましたが、昔の名残で今でも学校に腰洗い槽が残っています。
プールのあとに目を洗うことについては、2008年に慶応義塾大学の眼科グループが「プール後の洗眼は危険である」という論文を発表。
日本眼科医会もこの発表を踏まえ「プールではゴーグルの使用が望ましく、プール後の水道水での洗眼は積極的に勧めない」と見解を示しました。
また、香川県教育委員会によると、かつては水難事故を想定して「水中で目を開けられるように」と教えるため、ゴーグルの使用を「禁止」する学校がありました。しかし、こちらも時代とともに着用が認められるようになりました。
取材した屋島西小学校でも水泳の授業ではゴーグルの着用を推奨し、2023年から目洗い場を撤去しました。