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【特集】「親は日本語が読めない・書けない」外国ルーツの子どもたちを支援する教室を開いた女性の思い 香川

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 10月13日、丸亀市通町の商店街に新たな教室が開設されました。対象は小中学生を中心とした外国にルーツを持つ子どもたちです。
 この教室では、日本語や教科の指導だけではなく、進学や就職の相談にも応じたいとしています。この教室を開いた女性の思いとは……。

 元教員の池内道子さん(66)。これまで約10年間、外国にルーツを持つ子どもたちの指導にあたってきました。

 この日は、教え子らと協力して、3日後に迫った「教室」の立ち上げに向けて教材などを準備していました。

 外国ルーツの子どもたちが「日本語の教科書」で学ぶための教材もあります。

(池内道子さん)
「あの子もそうですけど、普通に『生活言語』はできるけど『学習言語』ができないので、学習につなぐ……数学でいうと『負の数』とか『数直線』とか、そういう言葉をちゃんと教えないと、日本語がわからない」

 教室の名前は「オアシスこくさい教室」。NPO法人「子どもたちの未来を応援するオアシス丸亀」が、香川県の委託を受けて丸亀市の商店街の一室に開設します。

 対象は小学4年生から中学生を中心に外国にルーツを持つ子どもたち。池内さんは、日本語や教科の指導はもちろん、進学や就職に関する相談にも応えたいとしています。

 開設の準備をしていたこの日、高校3年のロペス・リリアナさんが一足早く勉強に訪れていました。

 リリアナさんは小学校時代からの池内さんの教え子。週末に大学の試験を控えていました。

(高校3年生/ロペス・リリアナさん)
「進路で迷ってたときに池内先生に相談しました。池内先生から『自分が行きたいところに行きなさい』って言われて、大学に行くことにしました」

(池内道子さん)
「高3の子が、この前、『先生、私たちは親が日本語はしゃべれるけれども、読めない・書けないでしょ? だから先生を頼るのよ』というのを聞いた。あ、そうなんだと思って、彼ら・彼女たちが独り立ちするまでは、支援をしていきたいと思って」

 人口減少が続く香川県ですが、外国人は増加傾向で、2022年12月時点では約1万5000人でした。

 在留資格別に見ると、県全体では「技能実習」や「特定技能」といった「期限付き」の人が半数近くを占めていますが丸亀市は「定住者」や「永住者」など日本で生活を続けている人の割合が高いのが特徴です。

 丸亀市教育委員会によりますと、日系ペルー人を中心に造船会社で働く外国人が増えたため、2008年ごろから丸亀市の小中学校でも外国にルーツを持つ子どもが増えました。

 在籍者数が最も多い城乾小学校では、2023年度全校児童の2割ほどが外国ルーツの子どもです。

 池内さんは、城乾小学校に勤務していた2011年に、外国ルーツの子どもたちを指導する「こくさい教室」を立ち上げました。

 ここで6年間講師を務めたあと、丸亀市立東中学校でさらに3年間指導に当たりました。

(池内道子さん)
「(中学校に勤めて)1年目と2年目は(高校への)進学率は50%以下でした。3年目になって、94%だったかな……。やっと3年目に実を結んで、今は90%前後で落ち着いて、進学は大体できている」

 進学率が上がった今は、将来を見据えた進路を選択ができるように支援することが重要になっています。

 10月13日。この日開設された「オアシスこくさい教室」に授業を終えた中学生たちがやってきました。

(池内道子さん)
「さんはい! あいさつは大きな声で、わからないことは『わかりません』と必ず正直に言います」

 教室で教えるのは、池内さんが声を掛けた元教員やスクールソーシャルワーカーです。

 教科書の日本語が難しい場合も――。

(先生が教える様子)
「『分母』の『最小公倍数』をかけて……難しいね、これ」

(池内道子さん)
「どこ? モジカさん、これはしなくていい。今ここしなくていい」

 日本で生まれ育った子もいれば、日本に来てからそれほど時間が経っていない子もいます。それぞれのペースに合わせて、夕方5時まで、1時間半ほど勉強しました。

(参加した生徒は―)
「わからなかったところや難しかったところ、教えてくれました。テストで、点取れます」
「勉強頑張ってやりました。楽しいです」

 丸亀市に住む外国にルーツを持つ子どもの親は、日本語を読んだり書いたりすることが難しい人も多く、自宅では母国語で会話することがほとんどです。

(丸亀東中学校 スクールソーシャルワーカー/髙木千晶さん)
「親御さん自身が日本の生活で困られたりということが多いので、親御さんに解決する力というのがなかなか難しかったりするのかなと思いますので、学校でもなく家でもなくて頼れる場所があるというのはすごいいいかなと思う」

 池内さんは、新たに立ち上げたこの教室で子どもたちが日本の社会で独り立ちできるよう寄り添い続けます。

(池内道子さん)
「日本の社会でちゃんと働いて税金も納めて、日本の中で楽しくアイデンティティーを持って過ごしてほしいなと思います」

 「オアシスこくさい教室」は毎週金曜日の放課後に開かれます。

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