国は熱中症による重篤化を防止するため2025年6月1日に改正労働安全衛生規則を施行します。これにより職場における熱中症対策の強化が事業者に義務付けられることになります。
厚生労働省によりますと、2023年の職場における熱中症の死傷者数は1106人で、このうち死亡者数は31人でした。
国は職場での熱中症について、死亡災害になるケースがほかの災害の約5~6倍ある。死亡者の約7割が屋外作業のため気候変動の影響でさらなる増加が懸念されるなどとしています。
さらに、2020年~2023年に職場で熱中症で亡くなったケースのうち、「発見の遅れ」や「医療機関に搬送しなかった」などといった「初期症状の放置・対応の遅れ」によるものが、103件中100件を占めるとしています。
これらのことから、6月からの改正労働安全衛生規則では、熱中症を生じるおそれのある作業(WBGT28度以上、または気温31度以上の環境で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて作業が見込まれるもの)を実施する場合、事業者には「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられます。
事業者には、熱中症の自覚症状がある作業者や、熱中症のおそれがある作業者をみつけた場合に、報告体制(連絡先や担当者)を事業場所ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること。また、熱中症のおそれがある作業者を発見した場合には、「身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせる」など、重篤化させないための実施手順を事業場所ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知することなどが義務付けられます。
国は熱中症の恐れがある人に対しての処置として、意識の有無だけでなく、「返事がおかしい」「ぼーっとしている」など様子がおかしい場合には「熱中症の恐れあり」と扱う。判断に迷ったときは、救急安心センター事業の電話窓口「♯7119」を活用すること。医療機関までの搬送時や、経過観察中に1人にしないことなどを呼び掛けています。