今回の解説は子どもたちに無料や低額で食事を提供している「子ども食堂」についてです。コメなどの物価高騰により「子ども食堂」の運営が苦しくなっています。岡山県は、新たに仕組みを作り支援に乗り出していますが、取材を進めると支援の難しさも見えてきました。
岡山市の公民館で5月11日に開かれた子ども食堂です。小学生ら子ども11人と大人11人が訪れ、昼食をとりました。
岡山市のボランティア団体が月に1回開いていて、高校生以下は無料、大人は300円で食事ができます。
この日のメニューはハンバーグ、春雨サラダ、ゆかりご飯です。
(子どもは―)
「おいしい(Q.どれがおいしい?)ゆかりご飯」
「ハンバーグがおいしい」
(大人は―)
「すごく助かりますね。これだけの量を家族でってなるとなかなかお金がかかるので」
「1食300円じゃ作れないですよね。給食とかでももうちょっといくんじゃないのかなっていうイメージなので、本当にありがたいと思います」
物価高騰で食材のやりくりに苦労
一方で、子ども食堂を運営する側は物価の高騰に頭を抱えています。
岡山市で子ども食堂を運営しているボランティア団体です。物価高騰の影響で食材のやりくりに苦労しています。
(料理を作るボランティア)
「材料費がだいぶ上がっているんですけど、最低限のものを使って。でも味はおいしいものを作りたいので」
上がり続ける食材の価格。さらに、2024年から食材の寄付がそれまでの半分以下に減りました。それでも、おいしい食事を提供しようと工夫しています。
(料理を作るボランティア)
「ニンジンもうちょっと大きいのを買っとったら時間のロスがあれ(減るの)だけど。ちょっとでも倹約と思って小さいのを買おうと思った。値段をちょっとでも抑えながら、事前に広告を見ておいて、この日まで安く売り出しがあるんだったらその時に買ったらいいかなぁとか」
この団体は、社会福祉協議会からの支援や企業からの寄付などで運営費を賄ってきましたが、2024年度、初めて赤字になりました。
(たいよう子ども食堂/西健治 代表)
「厳しいと思いますよ。令和7年(2025年)はできても8年(2026年)、9年(2027年)になるとできないかもわかりません。いろんな人の力を借りてどう乗り切っていこうかなと思っています」
認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」によりますと、岡山県には2024年9月時点で子ども食堂が109カ所あり、2021年の倍以上になっています。
そして、むすびえが2024年7月から8月にかけて全国の子ども食堂を対象に行ったアンケートによると、88.5%の子ども食堂が「物価上昇による影響を感じている」と回答しました。また、56.5%が「物資・食材の寄付が減っている」と回答しました。
岡山県は運営支援の基金を創設
こうした中、岡山県は、新たな支援の仕組みを作りました。
(岡山県子ども家庭課/田口昌弘 課長)
「子どもの居場所の中でも特に子ども食堂が困っているだろうということもありまして、基金を立ち上げたというところでございます」
岡山県は、2025年3月、企業版ふるさと納税の寄付金の一部を原資にして「岡山県子ども食堂応援基金」を立ち上げました。子ども食堂の運営を支援するのが目的です。
仕組みはこうです。
岡山県が企業や個人に対して寄付を募り、集まった寄付金を基金に積み立てます。そして、民間団体「おかやま子ども支援ネットワーク」を通じて、各子ども食堂に配分し、食材費や光熱費などに充ててもらいます。
寄付金の使い道を明確にすることで寄付が増えることを期待しています。
(岡山県子ども家庭課/田口昌弘 課長)
「通常であれば、寄付となるとどういったものに使われるのかというのが分からない中で、なかなか寄付につながっていかないということもあるかと思うんですけど、機運の醸成であったりとか支援の取り組みの広がりであったりとかということにつながるのかなということを期待しております」
一方で、寄付金の配分にあたって支援の対象や要件、金額の配分をどうするかなど詳細は決まっていないのが現状です。
(岡山県子ども家庭課/田口昌弘 課長)
「それぞれの団体によって開催頻度が月1回であったり、あるいは頻繁に開催されているところもございます。参加する子どもの数もその食堂によってさまざまといったところもありますので、どこまでの団体を対象にどういう規模のところに支援をしていくかといったところを決めていく上でも悩ましい部分はあると思っています」
専門家「目的をより明確に」
子どもの貧困などについて研究している岡山県立大学の近藤理恵教授は「子ども食堂は運営団体によって特色が異なるため支援が難しい面がある」と指摘します。
(岡山県立大学 現代福祉学科/近藤理恵 教授)
「困窮している世帯の子どもたちだけが来ていて、その子たちのために何か支援をするということであれば目的が分かりやすいんですけれど、その子ども食堂がどんな場所で何のためにしているかということが分かりづらい場合は寄付になかなか結び付かないのかなというふうに思っております」
子ども食堂には困窮世帯の食事支援や地域住民の居場所づくりなどの機能がありますが、何を重視するかは運営団体ごとに異なります。
近藤教授は、それ自体は悪いことではないとした上で、運営団体は活動の目的を、行政は支援の目的をより明確にすべきだと主張します。
(岡山県立大学 現代福祉学科/近藤理恵 教授)
「いろんなパターンの子ども食堂があるので、周囲の方にどのような子ども食堂なのかということを分かってもらう必要があるかなというふうに思います」
近藤教授は、「日本は欧米に比べて寄付をする文化がそもそも根付いていない」とも指摘しています。
こうした点を解消することも大きなポイントだと感じます。