高松空港の利用者は2024年度210万人を超え、過去最多となりました。中でも増えたのが「国際線」で、前の年度の2倍近くまで増加しました。その理由とは?
香川県が4月発表した高松空港の利用者は、2024年度が国内線・国際線合わせて211万1570人。これまでで最も多かった2018年度の206万6323人を上回り過去最多となりました。
その内訳をみると国際線が増えているのがわかります。国際定期路線は47万8819人で、こちらは前の年度の1.9倍でした。利用者増加の理由の1つが「国際線の新規就航」です。
2024年7月、韓国の格安航空会社「ジンエアー」が高松ーソウル間の定期路線を就航しました。高松空港では2019年4月から9月の間、国際線は1週間に4路線最大23往復が運航していました。現在は5路線で最大37往復に増えました。
「周遊のしやすさ」と「外国人の観光スタイル」が合致
なぜ、国際線を増やせたのか? ポイントは「周遊のしやすさ」でした。
(香川県空港振興課/嶋本徹也 課長)
「高松からなら松山も高知も徳島も行けますし、近県なら岡山にも行けるので、そういったところの拠点である」
周遊のしやすさと、外国人観光客の観光スタイルが、合致しているそうです。
(香川県空港振興課/嶋本徹也 課長)
「旅行会社の商品を見ると、香川県だけにとどまるのではなく、近県を回っていますので、香川・徳島・高知・松山と行って、また帰ってきて高松に泊まって出ていくとか。そういった周遊をするのに高松空港は地理的には優れているかなと思う」
高松空港「現在の広さだと増便や新規路線開拓は難しい」
一方で今後も外国人観光客が増える場合、課題も。
(荻津尚輝リポート)
「国際線のチェックインカウンターには多くの人がやってきています。ただ日曜日など人が多い時間帯には、この空間が人でいっぱいになるだけでなく、ここを進んだところにあるレンタカーの受付カウンターまで列が続くそうです」
利用者の増加に対して空港の受け入れ体制が十分でなくなる懸念があるそうです。
(高松空港/小幡義樹 社長)
「航空会社がダイヤを決めていく中で、どうしてもこの時間に高松空港に到着したいという時間が割と重なることが多い。お昼前後の時間が集中する傾向があるので、混んでいる時間と混んでいない時間があるんですけど、ピークの時間に合わせて容量拡大をしないと、全く新たな路線だったり航空会社に来ていただくには少し支障が出かねない」
現在の高松空港の広さだと、チェックインスペースや搭乗前の待合所の広さが足りなくなるほか、国際線の受け入れについても、飛行機に乗る時に使う搭乗橋が2本しかないため、これ以上の増便や新規路線開拓は難しいということです。
(高松空港/小幡義樹 社長)
「同じ時間帯に3つ飛んできちゃうことは現実に起こっていまして、かなり色んなところで待機列ができるんですけど、待ち時間が長くなっちゃうとか……」
国際線エリアをリニューアルへ
こうした課題を解決するため高松空港は国際線エリアのリニューアルを決めました。
リニューアルでは、国際線の搭乗橋を2本から3本に増やし、同じ時間帯に国際線3便の受け入れが可能になります。2025年10月末ごろの供用開始を予定しています。
また、国際線の到着・出発それぞれの機能を強化するため、新たに建物を増築します。空港ビル西隣の観光バス駐車場に立てる予定です。
延べ床面積約3300平方メートルの3階建てで、チェックインカウンターや搭乗待合スペースを2階に設けます。国際線のチェックインカウンターや搭乗待合室、出発ゲートなども拡充されます。
また、入国審査場などの到着エリアは倍の広さになります。これらの供用開始は2026年8月ごろです。増築と改修を終えてグランドオープンは2027年春ごろを予定しています。
(高松空港/小幡義樹 社長)
「(旅の)最初でつまずいてしまうと満足度もマイナスになるかもしれないので、そこは気持ちよく出発の時も到着の時も空港を通過してもらえるような空港にしていければなと思います」
高松空港では、増築に合わせていまある空港ビルの国際線エリアも改修します。高松空港の小幡社長は、国際線エリアの機能が拡充することで、今後さらなる新しい路線の誘致も考えたいとしています。
専門家「空港の弱点は二次アクセス」
一方で空港に詳しい専門家は、インバウンド需要に対応する課題として、空港と観光地を結ぶ「2次アクセス」を挙げます。
(慶応義塾大学 商学部/加藤一誠 教授)
「空港の弱点なんですよ、二次アクセスが。空港ってちょっと不便な所にありますね」
高松空港から中心市街地まではバスで30~45分かかります。電車は通っていないため、バスやタクシー、レンタカーを利用しなければなりません。
利用者が増えるならバスの増便などが期待されますが、そこにも課題があるそうです。
(慶応義塾大学 商学部/加藤一誠 教授)
「バスも人手不足。ドライバー不足。増やしたくても増やせない現実がある」
そのほか、空港で働くスタッフの待遇改善も必要になります。
(慶応義塾大学 商学部/加藤一誠 教授)
「新型コロナ(明け)の時に急に観光客が戻ったものだから、人手不足になったんですよ。福岡空港で保安検査の前でダーッと並んだりした。それで徐々にスタッフの待遇を良くしたり給料を1年間に2割上げたりね。働き方改革も含めてやっていかないと人が集まらない。その人らがいてこそ飛行機は降りられるものですから」
今後、外国人観光客の増加が予想される中で、空港と行政、交通事業者などが一体になることが大事だと思います。