視聴者の皆さんの疑問に答える「みんなのハテナ」です。今回のテーマは「忘れ物」です。
ついついしてしまう「忘れ物」。忘れ物や落とし物が届く量も近年増えてきているようです。
岡山県警に届けられた過去10年分の拾得物の数は、新型コロナウイルスが流行した2020年ごろに一度減少しましたが、近年はコロナ禍前の水準に戻り、2024年の拾得物の数は23万4220点でした。
届けられた現金の額でみてみると、2023年が過去最高額となる約3億1300万円でした。2024年も過去2番目に多い金額となりました。
岡山県警によると、拾得物の数や金額は20年前と比べ約2倍になっているということです。
どんな忘れ物が多いの?(善通寺市 とら 57歳)
この疑問に答えるために、2024年に岡山県警に届けられた種類ごとの順位をまとめてもらいました。
2024年岡山県警に届けられたベスト5は、5位が傘、4位が財布、3位がタオルやハンカチ、キーホルダーなどの生活用品、2位は運転免許証などの身分証明書類でした。そして1位はキャッシュカード、クレジットカード類です。上位2つは財布の中によく入っていますよね。
岡山県警によると、近年この順位に大きな変動はないそうです。
また「無くした」という遺失届になると傘や生活用品ではなく、家の鍵など生活に直結するものが多いということです。
忘れ物が無くならないのはなぜ?(倉敷市 めんでぃー 34歳)
話を聞いたのは、心理学を専門とする広島大学の湯澤正通教授です。
(広島大学/湯澤正通 教授)
「私たちの脳にはワーキングメモリというものがおでこの裏側にある。このワーキングメモリは脳のメモ帳、黒板というふうに例えることができるんですけど、目的に応じて情報を覚えながら考えるという働きをしている脳の場所」
湯澤教授によると、ワーキングメモリとは短期・長期記憶とは異なり情報を「一時的」に保つ機能のこと。
例えば、通勤電車で今の時期忘れがちな傘を例にワーキングメモリの動きをみてみると、まず人は雨が降っているから傘を持って行きますよね。そして電車に入って席に座り傘を置きます。
そして仕事のことを考えたり携帯を見たりするとワーキングメモリは切り替わり、傘のことはすっかりいなくなってしまいます。そして電車が到着したところでメモリもまた切り替わり傘を忘れてしまう。
湯澤教授によると、忘れ物をする仕組みはこういったワーキングメモリの切り替わりによるものだということです。
(広島大学/湯澤正通 教授)
「頭の中で情報って入れ替わっていく訳ですよね。傘っていうのは晴れたときは必要ないし、いつも必要ではないので。そういうものっていうのは忘れやすい」
忘れ物を無くす方法が知りたい(新見市 こにーみ 40歳)
(広島大学/湯澤正通 教授)
「雨っていう天気と傘っていう情報は頭の中で一旦結び付いて記憶としては残っている。だから記憶として残っている情報を(電車から)降りるときに引き出せる人っていうのは忘れない」
忘れ物をしないために湯澤教授が挙げたポイントが、一時的なワーキングメモリをその後の行為と結び付けること。
傘の例で見てみると、傘を置いたときにその後の「駅で電車を降りる」という行為と結び付けてワーキングメモリにする。
そうすることで、ほかの考えことをして傘がワーキングメモリから無くなったとしても、駅や電車を降りるのが手がかりとなり傘を思い出すことができるということです。
また忘れ物をしないための意外な点も教えていただきました。
(広島大学/湯澤正通 教授)
「ネガティブな感情っていうのは人は嫌なんですよ。それを抑えるのに脳のエネルギーを使うんですね。そこにワーキングメモリが取られちゃうので、そうすると本来勉強とか仕事とかに使うべきワーキングメモリが使えなくなっちゃうので」
ワーキングメモリも脳の機能の一部。使える量も自分の体調などのエネルギーによって変わってきます。
湯澤教授は「6月」について「梅雨だから傘を持って行く」といういつもと違う行動に加え、「雨でゆううつな気持ちになる」という外的な要因に脳のエネルギーが使われることも忘れ物が多くなる1つの要因としています。
(広島大学/湯澤正通 教授)
「当たり前のことなんですけど、十分に寝て栄養のあるものを食べて、規則正しい生活をしてっていうのが大事。人とコミュニケーションを取って仲よく楽しく過ごすのが一番いい」
湯澤教授には、忘れ物が多い人は「手や体から離さない」「メモやリマインド機能などの道具を使って目で見える形にする」など意識の外から離さないことが効果的だと話しています。
皆さんもしっかり注意して過ごしてください。