日本を代表するジャズサックス奏者の一人、多田誠司さん。高校卒業まで高松市で育ち、岡山大学ジャズ研究会出身の多田さん。2025年、がんの手術を行い、声と楽器を演奏する力を失いました。
2025年11月。地元のファンの前で多田誠司さんは手術前の「最後のライブ」を開きました。現在、東京都在住の多田さん。この日は高松市に帰省し、なじみのジャズバーで旧友と久しぶりに再会しました。
多田さんの高松高校時代の同級生で、弁護士の関谷利裕さん。当時、多田さんは関谷さんらと組んだバンドでボーカルを担当していたそうです。
(高校の同級生/関谷利裕さん)
「その歌が本当にうまいんですよ。もうね、あのときにどれだけの女子高生を泣かせたか!」
(岡山大学JAZZ研究会の後輩/宮本吉朗さん)
「私が本当に感慨深いなと思ったのは、ご病気が分かってから発表するまでの2回のライブに私同席させていただいたんですね。その中バリバリと演奏されている姿は、ベースを弾いていると後ろから拝見できるんですね。もう感慨深くて何とも言えなかった」
1960年、高松市に生まれた多田さんは高松高校、岡山大学で楽器の演奏を続けた後、一度、一般企業に就職しました。
しかしジャズへの情熱を捨てきれず、28歳で上京。その後、約40年にわたり日本を代表するジャズサックス奏者として活躍してきました。
しかし……
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「去年の2月くらいからなんか喉が違和感っていうかイガイガするなと思って。そしたらいきなり下咽頭がんのステージ4って言われて、青天のへきれきで本当にびっくりしました」
手術をしたら以前のように楽器を演奏できなくなる。声も失ってしまう。それを受け入れた上で手術前の最後のライブツアーに臨みました。
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「自分が死ぬとわかっていてでも楽器を吹き続けるっていう勇気は僕にはなかったので、生きてさえいればまだ何かしら自分にできることがあるんじゃないかと前向きに考えて。やっぱり家族とかファンとか生徒とかそういう愛する人たちのために自分が生き続けるということに意味があるように思ったので、そういう決断をしました」
そして2025年12月。手術は成功しました。
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「目が覚めたら終わっていたっていう、声出そうとしても出ないので、あーこういうことなんだなって」
現在は「人口咽頭」という専用の機械を首にあてて会話しています。
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「僕はね、彼に借りたレコードでジャズに会ったの、僕の人生を変えた人ですよ。レコードを貸してくれて、それで僕はジャズに目覚めたんです。恩人です。ありがとうございました」
(ジャズユニットで共に演奏/鹿庭弘百さん)
「(演奏する時の)そのエネルギーとかパワーとか歌心とか、音楽っていうものの世界の音宇宙を本当に感じさせてくれるミュージシャンです、本当にそう思います」
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「いやもう恥ずかしい。普段こんなこと言ってくれないけん。いつもふざけてばっかりでこのやろうって思うんだけど! 早く言ってよ!」
(弟子/大林杏子さん)
「毎回泣くんですが、うれし涙なんですけど。ちょっとできることよりも少し難しいことをいつも先生は教えてくださるので、『くそー!』と思いながら終わるんです、ほろりと泣きながら。このままお病気を克服されて元気になられると信じていますので、これからもよろしくお願いいたします」
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「はい。耳が遠くて聞こえないんですよ」
(弟子/大林杏子さん)
「すごくいいこと言ったんですけどね、残念です(笑)」
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「本当は聞こえてた」
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「(今は)治療も全部終わって体は全然元気なんです。がんが一番嫌うのは人間の前向きな気持ちだっていうので、だからこのままずーっとがんに勝てればいいなと思っていますけど」
そんな多田さんの手術から回復までの「第二の人生」の道のりを描いたドキュメンタリー映画がこのほど完成しました。
(ジャズサックス奏者/多田誠司さん)
「同じような境遇の方がもしいらっしゃったら、何かの勇気とか前向きな気持ちになってもらえるような映画になるんじゃないかなと思ったのでお受けしました」
「もちろん音楽からは離れられないし、また例えば曲を作りたくなるかもしれないし、とにかく自分の中ではもう真っ白なんです。だから楽しみでもあるし、でも音楽とのつながりは切れるわけがないので、自分自身それを楽しみに生きたいと思います。どんな形でもいいから音楽に1回触れてみて。チャレンジする価値のあるものであることは間違いないです。そのための手伝いは僕がいつでもやるので、まあまあ教えるの上手いですよ」
(2026年7月9日放送「News Park KSB」より)