相次ぐクマ被害を受け、秋田県は、防衛省に自衛隊の派遣を要請。自衛隊は、どのような任務にあたるのでしょうか。その内容が分かってきました。
■現場騒然 銀行にクマ居座る
警察 「クマが出ています」
散歩中の男性 「待っていると来るかもしれない…。あ!いたいた」
盛岡市にある岩手銀行本店。28日朝、クマが入りました。散歩中の男性は、すぐに警察官に報告。
警察 「車から出ないようにお願いします」
警戒しているのでしょうか。建物の脇から顔を出し、パトカーを見つめています。
一気に、緊張感が増す現場。
警察 「近くにクマが出ています」
その後、クマは銀行の地下駐車場に入ったとみられます。
盛岡では、先週もクマの姿をカメラが捉えていました。現場は盛岡市の中心部。5日前の23日は、市役所近くを流れる中津川に出没。28日朝にクマが入った銀行と近い場所です。この2頭のクマが、同一の個体かは分かっていません。
現場近くにいた人 「本当に怖い。『こんなところまで来ちゃったな』という感じがする」
岩手銀行本店は、すぐに駐車場を封鎖。クマを閉じ込めたうえで、市が捕獲に乗り出しました。捕獲されたクマの体長はおよそ1メートルでした。
市の担当者 「麻酔(吹き矢)が届く範囲に行けたので、それで麻酔捕獲を実施した」
岩手県では、27日もクマに人が襲われたとみられています。この家の庭で亡くなっていたのは、佐藤富雄さん(67)です。
近隣住民 「お一人暮らしでした。クマに襲われるなんて考えもしなかった出来事で」
数日前には近くでクマが撮影されていて、警察が警戒にあたるなかでの出来事でした。
隣の秋田県でも50人以上が襲われ、2人が死亡しています。対策は待ったなしの状況です。
■小泉防衛大臣「支援の内容を調整」
28日、秋田県の鈴木知事は、防衛省に自衛隊の派遣を要請。小泉大臣に直接、窮状を訴えました。
鈴木知事 「本当に中心市街地、場所を選ばず出没するようになっていて、これはおととしの大量発生の時と全く状況が違う。防衛省自衛隊の力を借りなければ国民の命が守れない状況になっている」
小泉大臣 「午後に東北方面総監部の連絡員が秋田県庁にうかがって支援の具体的な内容に関する調整を開始する」
小泉大臣は、すぐに対処する考えを示しました。
■自衛隊派遣 何をする?
鈴木知事 「有害駆除が手いっぱい。撃つには資格や権限が必要になるが、そこ以外にもマンパワーが割かれている。それをまずカバーしてもらいたい」
さっそく28日午後、秋田県と自衛隊の担当者による打ち合わせがありました。
第9師団副団長 三浦英彦陸将補 「自衛隊の持ちうる能力と権限のもと、効果的な協力を行いたい」
防衛省はクマの駆除は行わず、わなの運搬や駆除後の解体などの後方支援をするために隊員を派遣する方向で調整を進めています。
鈴木知事 「装備であったり武器の携行に関しても(クマが)本気で襲撃してくる可能性がある任務なので、自衛官に被害が及ぶことがあってはならない」
■紅葉スポットではクマ厳重態勢
クマの出没が続けば続くほど、経済への影響も避けられません。
太陽に照らされ光り輝くススキに…青空のもと映える赤や黄色に色づいた木々。標高1600メートルにある湿原、福島市の浄土平です。
息をのむ絶景。ただ、その中で聞こえてくるのがクマ鈴の音色です。山の観光地では、いつも以上に恐怖心が広がっています。
浄土平ビジターセンター 西村真一さん 「普段の年と比べて出没情報がすごく多いわけではない」 「(Q.今、インタビュー中もクマ鈴が…)鳴っています」
いつもと変わらない観光地でも、常に行楽客の頭の片隅にはクマへの恐怖があるようです。
茨城からの行楽客 「どうやってこれから山歩きを楽しんだらいいのか考えなきゃいけない」
クマへの恐怖心は、あらゆる経済活動に支障をきたしかねません。根本の解決が求められています。