5月5日は「こどもの日」ということで、「子育て」について考えます。
出生率「2.95」 岡山県奈義町の子育て支援策とは
「2.95」こちらは岡山県奈義町の2019年の合計特殊出生率です。同年の全国平均1.36に比べると2倍以上であることが分かります。奈義町は今もさまざまな子育て支援策を打ち出しています。
そんな奈義町の「子育て応援大使」に4月、俳優の杉浦太陽さんが就任しました。杉浦さんが感じた奈義町の特徴とは……。
(奈義町の子育て応援大使/杉浦太陽さん)
「自分の中で(岡山県は)生まれ育った場所なので、ゆかりのある県だったので、4人子育てしている中で子育てに特化した奈義町とつながれたのは僕自身も経験になりますし、僕が大使になったことでいろんな方が明るくなれたらいいなと強く感じています」
4月17日、奈義町の子育て応援大使に就任した俳優の杉浦太陽さん。玉野市生まれで3歳まで過ごし、現在は4人の父親です。
(奈義町/奥正親 町長)
「きっかけになりましたのは去年SDGsの大会を奈義町でやりまして、町民の方から杉浦太陽さんにぜひ来てほしいということがあって、そういうご縁で」
岡山県北部に位置する奈義町。町のまとめでは人口はこの10年で500人以上減り、高齢化率は35%を超えました。この状況を打開するには若い世代の移住・定住を進めることが必要です。
そこで、奈義町は独自の「子育て支援策」に力を入れてきました。
町民限定で先輩ママが子どもを一時預かり
2007年に町が設置した子育て支援施設「なぎチャイルドホーム」。ここではさまざまなサービスが行われています。
(利用者[1児の母親])
「もうすぐ1歳4カ月です。一時預かりの『すまいる』を利用したり、たいてい遊びに来ています」
「すまいる」は地域の人や先輩ママが子どもを預かるサービスです。町民限定で利用することができ、料金は1時間300円、生後6カ月から小学1年生までの子どもを預けられます。
(利用者[1児の母親])
「通院するときにそういうときに利用させてもらったり。両親は倉敷と大阪の方なので少し離れていて、だからちょっと預かってっていうことができないので助かります」
自主保育は「集団生活を学ぶ場」にも
こちらは自主保育「たけの子」です。利用できるのは2歳半から保育園・幼稚園に入る前の子どもたちと保護者です。
奈義町の幼稚園は公立の2園のみで、いずれも5歳からの入園です。「たけの子」は子どもたちが幼稚園や保育園に入る前に「集団生活を学ぶ場」にもなっています。ここで子どもたちをみているのは、保育士や先輩ママたちです。
(自主保育で子どもをみる先輩ママ[3児の母親])
「わが子もここを卒業してるんでここの場所のこともよく知ってるし、お手伝いできたらなと思って」
町の就労支援「子どもと一緒に働けるのがいい」
(松木梨菜リポート)
「こちらはお母さんが子どもを連れて働くことができる場所なんです。1日30分からでもOKだということです」
「奈義しごとえん」は2017年に町が就労支援の一環で設置したものです。
(利用者[2児の母親])
「今は(町の)広報紙のラベルを封筒に貼る作業をしています。息抜きっていうかお小遣い稼ぎっていうのもあるし、子どもと一緒に働けるっていうのがいいなと思って」
今後も時代のニーズに合った子育て支援を
さまざまな子育て支援策に取り組んだ結果、2005年に1.41だった奈義町の合計特殊出生率は、2014年には2.81に。2019年にも2.95となるなど全国トップクラスを誇っています。
(奈義町の子育て応援大使に/杉浦太陽さん)
「出生率も高いっていうのは安心して産める環境が整わないと伸びないと思いますし、1人目の育児で『つらい』『もういいや』って思ったら、一人っ子で終わることが多いじゃないですか。子育てってみんな初めて経験することじゃないですか。それを先輩だったりとか同じ年代の子どもたちを持つ親と意見交換しながら『自分は孤独じゃないんだよ』って、のびのび子育てできる場所って改めて発信していきたい」
この他、奈義町では経済的なサポートも行っています。例えば、高校卒業までの医療費を無料にしたり、高校生1人当たり年間13万5000円を在学中の3年間支給したりしています。
奈義町は今後も時代のニーズに合った子育て支援を取り入れたいということです。
人口の「自然増」を実現している香川県宇多津町
そして香川には、若い世代を呼び込み人口の「自然増」を実現している自治体があります。
人口1万8000人余りの宇多津町。47都道府県で最も面積が小さい香川県の中でも最も小さく、多くの保育所や幼稚園、小・中学校が直径2キロのエリアに集まっています。
(宇多津町民は―)
「スーパーとかも近いですし、隣町とかもすぐ行けるので選択肢が広いと思います」
「5年前に北海道から来ました。旦那の会社の上司が『宇多津がいいよ』って。駅も近いし、スーパーも近いし公園もあって、どこでも行きやすい。宇多津で良かったな」
(宇多津町 保健福祉課/田内晴規さん)
「商業施設も徒歩圏内に数多くありますので、コンパクトでありながらも非常に住みやすい町で、かつ、若者世代が多いということもありまして、出生率、そういったものが増加とか維持につながっているのではないかと考えています」
高齢化率21%にとどまる 子育て支援に力
2020年10月時点の宇多津町の高齢化率は21.7%。高齢化率が高い小豆島町や土庄町の半分ほど。高松市や丸亀市も大きく下回っています。
2021年は生まれた赤ちゃんの数が亡くなった人の数を上回る「自然増」となりました。香川県ではこの10年、「宇多津町のみ自然増」という状況が続いています。宇多津町としても子育て支援に力を入れています。
(宇多津町 保健福祉課/田内晴規さん)
「教育費・学校の運営費だったり、保育施設や児童館だったり、そういった所の運営費にかける予算として(全体の)36%ほど。結構子育てに力を入れているのではないか」
JR宇多津駅前のサポートセンターでは週に3回、未就学児と親たちが交流する「はぐはぐランドうたづ」を開いています。参加は無料。子ども同士で遊んだり、親たちが悩みなどを相談したりできます。
(利用者は―)
「おもちゃがたくさんあって、自由に遊べるのですごく助かっています。違う友達と同じ世代とかの子どもと遊べるところがいい」
「娘がすごく楽しんでいる姿がすごく癒やされます。マンションに住んでいるんですけど部屋が狭いので、これだけ広い所で広々と遊べるのがすごくいいなあと思います」
子育てしやすい地域にするには何が必要?
Park KSBアプリでは「子育てしやすい地域にするには何が必要か」を聞いてみました。
すると、「育てる親の雇用を確保する(高松市・20代女性)」、「共働き世帯のニーズに合わせたサービス(坂出市・40代女性)」、「子どもたちが自由にノビノビと外で遊べる環境(岡山市・40代男性)」、「世代を超えて交流する機会が必要(早島町・50代男性)」などの意見が出ました。
国のまとめによると、日本の子どもの数は41年連続で減少しています。