岡山県備前市は、世帯全員がマイナンバーカードを取得することを条件に、小中学校の給食費などを実質、免除することについて条件を撤回しました。
(備前市/吉村武司 市長)
「マイナンバーカード取得を要件としないよう制度を変更することといたしました。財源を確保できたためであります」
備前市の吉村武司市長が5日に会見を開き明らかにしました。備前市は2022年度、市立の小中学校の給食費やこども園・保育園の保育料などを無料にしていました。しかし、新年度からは世帯全員のマイナンバーカード取得を条件にする方針を2022年12月に保護者に通知しました。
(備前市/吉村武司 市長)
「市民の皆さまがマイナンバーカードを取得するインセンティブとして位置付けることとしました」
これに対し3月22日、市民グループが5万人を超える反対の署名を提出し、岡山弁護士会も「平等原則に反する」などとして会長声明を発表しました。しかし、3月23日の備前市議会で、マイナンバーカードの取得で給食費などを実質、免除するための条例案が可決され、4月1日に条例が施行されました。
施行からわずか5日目の4月5日。吉村市長は条件を撤回し、2022年度と同様、マイナンバーカードを取得していなくても無料にすると発表しました。
撤回の理由については「国から1億2000万円余りの臨時交付金が給付されることが3月29日に分かり、財源が確保できたため」と説明しました。
保護者に対しては学校を通じて連絡するということです。
記者「本意ではなく取得した方がいらっしゃるかもしれないですが、そこはご理解してくださいということでよろしいでしょうか」
吉村市長「個々の市民の皆さん方がどのような思いで、例えばインセンティブを考えて(マイナカードを)取った方もおるでしょう。それは分かりません。ただ、強制したことは一切ございません」
こうした市の対応に市民は――。
(備前市民)
「(マイナカードは)まだ作ってないです(条件は)撤回のほうがいいとは思います」
「急いで作った人もいると思うのでかわいそう。いきなり話が変わったのは何でかなと疑問には思っている」
(反対署名提出の市民グループ/松下香さん)
「みんな喜んでいます。(しかし)差別しないと言ってくれたわけではないし、完全によかったとは思いません。市民の声を聞いた政治をしてほしい」
給食費や保育料のほかにマイナンバーカード取得の条件がなくなったのは、備前緑陽高校の生徒の制服代や通学費の補助などです。一方で、市営バスや乗り合いタクシーの運賃無料については、引き続きマイナンバーカードの取得を条件にします。
住宅の新築や太陽光パネル導入費用の補助については、条件を撤回するか、継続するか、今後、検討するということです。
2024年度以降、マイナンバーカードの取得を給食費無料などの条件にするかについては未定だということです。
(備前市/吉村武司 市長)
「(来年度については)全体を見て決めていかなければならない。ただ、(給食費などの)無償化というのはひとつの流れになってきている。国がどのような判断をするのか注視している」