トランプ米大統領は2月12日、ロシアのプーチン大統領と電話で会談し、ウクライナ和平交渉を即座に開始することで合意したと発表した。プーチン氏との1時間半に及んだ電話会談後、トランプ氏は同日、「プーチン大統領は、戦争を終結させたいということだ。そう遠くない将来、最終的には停戦に至るだろう。彼(プーチン氏)は戦闘終結を望んでいる」と述べた。バンス米副大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は2月14日、ドイツ南部ミュンヘンで会談し、ロシアとウクライナの戦争終結を目指す米ロが進める和平交渉について協議した。会談には、米国側からルビオ国務長官、ウクライナ・ロシア担当特使のケロッグ氏が同席した。バンス氏は、「永続的な平和を実現させたい。根本的な目標はこの戦争の終結」と強調、ゼレンスキー氏は「私たちは真の安全保障を必要としており、引き続き会議と作業を進めていく」と述べた。さらに、ゼレンスキー氏は、米欧による実効性のある安全保障の担保を要求しており、「もっと、プーチン大統領を止める計画を準備する必要がある」と訴えた。トランプ米大統領は13日、「明日、ミュンヘンで会議がある。ロシアは米国代表と共に出席する。ウクライナも招待されている。ロシア・ウクライナ・米国の高官が出席することになるだろう」と会議開催に言及していた。一方、ロシアのザハロワ報道官は14日、同会議にロシアが招待されておらず、ロシア当局者も出席しないことを明らかにした。
ウクライナ侵攻の停戦を目指し、交渉開始について米国とロシアが合意したこと受けて、トランプ大統領は13日、「来週は、サウジアラビアで会議がある。私やプーチン大統領ではなく、高官たちとウクライナも参加する。私たちはその戦争を終わらせることができるかどうか見極めるつもりだ」と、3者協議の開催を示唆した。ロシアのペスコフ大統領報道官は同日、「ウクライナも何らかの形で交渉に参加するが、これとは別に、ロシアと米国の2国間交渉も行われる」と明らかにした。ゼレンスキー大統領は14日、ミュンヘン安全保障会議で「まず米国や欧州と共通の計画を固めるべきだ。ロシアと話すのはそれからだ。私はロシア側では、プーチン大統領としか会わない」と述べた。停戦協議を巡って、トランプ氏は12日、ロシアとの戦争を続けるウクライナについて、2014年以前の国境に戻れる可能性の低さ、北大西洋条約機構(NATO)加盟は現実的ではないなどの見解を示していた。さらに、トランプ氏は、先進国7カ国(G7)の枠組みに、ロシアを復帰させるべきだと主張を展開するなど、ロシアへの融和姿勢を際立たせた。
英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は2月13日、ウクライナと西側諸国の高官の話として、「トランプ氏とプーチン氏が想定する停戦期限は、今後、予定されている2つの重要な日程の中から、停戦を確定させるだろう」と報じた。同紙によると、候補となるのは、正教会とカトリック教会が、今年4月20日に祝う「イースター(復活祭)」、または、ロシアがナチスドイツに対するソビエトの勝利を祝う5月9日の「ロシアの戦勝記念日」と見られている。一方、トランプ大統領就任後100日以内に停戦を目指すという情報もあるとみられ、4月30日がその期限となる。
ロシアとウクライナの停戦に伴う仲介を担う対ロ交渉チームには、ルビオ国務長官、ラトクリフCIA長官、ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)、ウクライナ・ロシア担当特使のケロッグ氏、ウィトコフ中東担当特使の5人が選抜された。一方、ロシア側は、ナルイシキン対外情報局長官、ウィシャコフ大統領補佐官、「ロシア直接投資基金」のドミトリエフ総裁。ウィトコフ氏は不動産事業に長年携わった経験もあり、トランプ氏からの信頼も厚く、ガザ停戦合意を巡っては、イスラエル側に対する交渉に尽力した実績がある。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は2月11日、ウィトコフ氏が、訪問したモスクワでプーチン大統領と3時間半にわたり会談を行ったと報じた。対米交渉のロシア側代表団で注目を集めているのは、ドミトリエフ氏で、米名門スタンフォード、ハーバードの両大学で学んだ後、金融関係でキャリアを築いた。米「ブルームバーグ」は14日、ドミトリエフ氏が、対米の非公式なルートにおいて、トランプ大統領との交渉等で、重要な役割を果たす可能性があると伝えている。 ★ゲスト:駒木明義(朝日新聞論説委員)、小谷哲男(明海大学教授) ★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)