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米バンス副大統領が異例の欧州批判 広がる欧米の亀裂

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“トランプ外交”に世界が揺れています。各国が対応を迫られる関税戦略に加えて、ウクライナの停戦をめぐる動きも活発に。ドイツで始まった国際会議で、戦闘終結に向け進展は見られるのでしょうか?(2月15日OA「サタデーステーション」)

■ゼレンスキー大統領 米に不満も

ミュンヘン安全保障会議の中で、ウクライナのゼレンスキー大統領の口から出たのは、アメリカへの不満ともとれる言葉でした。

ウクライナ・ゼレンスキー大統領(15日) 「アメリカは欧州の脅威(ロシア)に立ち向かう安全保障にノーを突き付ける可能性がある。(和平は)数人のリーダーによって決められてはいけない。トランプとプーチンでもない。本物の和平のために私たちは共にプレッシャーを与えないといけない。アメリカの行動は我々の利益と異なってしまった。これは現実だが変える必要がある」

3日間の日程で行われるミュンヘン安全保障会議。トランプ大統領がロシアのプーチン大統領と停戦交渉開始で合意したことで、その進展に大きな注目が集まっています。

その中で行われたのが、アメリカのバンス副大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談です。

アメリカ・バンス副大統領 「持続的な平和を追求する。戦争を終わらせたい。人が死ぬのを止めたい」 ウクライナ・ゼレンスキー大統領 「プーチン大統領を止め、戦争を終わらせる計画が必要だ」

トランプ大統領はウクライナに対し、軍事支援の見返りにレアアースなどを要求していましたが…

ワシントンポスト記者の投稿(15日) 「米国はゼレンスキー氏に対し、将来的なウクライナの鉱物資源権益の50%を米国に与えるとする文書への署名を求めたが、ゼレンスキー氏は丁重に拒否した」

ウクライナ大統領府も会談後、「経済関連に関する文書の起草を続ける」と表明。合意はなく、継続協議の形となっています。

アメリカ外交に詳しい上智大学・前嶋和弘教授 「(アメリカが)何らかの形で安心供与、ウクライナの安全を守ってほしいとウクライナ側は望んでいた。アメリカとしてはもうそこは考えていない。(ウクライナが)レアアースを取引材料に持ってきたが、アメリカ側は武器支援の継続ぐらいに思っている。(アメリカが)やりたいことはウクライナ戦争の欧州化。欧州がウクライナの安全保障を守ること。和平交渉の中で1つの大きなポイントになっていきます」

■米副大統領 異例の欧州批判

アメリカ・バンス副大統領(14日) 「私がヨーロッパに対して最も心配している脅威はロシアでも中国でもない。(ヨーロッパ)内部からの脅威だ。ヨーロッパ全域で言論の自由が後退している」

アメリカのバンス副大統領は、ヨーロッパで進むSNSを規制する動きを批判しました。

トランプ大統領就任以降、アメリカとヨーロッパの対立が目立ちます。例えば、来週末に総選挙をひかえるドイツ。移民排斥を主張する極右政党が、ここに来て躍進していますが、その一役を買っているとされているのが、イーロン・マスク氏です。

イーロン・マスク氏(先月) 「アリス・ワイデル共同党首が首相になることを願っています。ドイツにとって良い事だと思います」。

選挙集会で支持を表明。ナチスの過去を持つドイツでは、主要政党が、極右政党との協力を拒否するファイアウォール(防火壁)という合意がありますが、バンス副大統領は、その姿勢を批判。

バンス米副大統領(14日) 「民主主義は、人々の声が重要であるという神聖な原則に基づいています。ファイアウォールの余地はありません」

ドイツの政権側からは避難の声が高まっています。

ドイツ・ピストリウス国防相(14日) 「アメリカの副大統領が、ドイツの民主主義に対する疑問をヨーロッパに投げかけた」 ドイツ・ショルツ首相 「私はイーロン・マスクのやっていることに全く同意できない。不愉快だ」

マスク氏は自身のXで、バンス副大統領の映像に「MAKE EUROPE GREAT AGAIN」と書き込みました。

ヨーロッパ政治に詳しい筑波大学・東野篤子 教授 「ドイツは再統一したとはいえ(豊かな)西と(苦しい)東に分かれており、東側のドイツに住む人たちの不満の受け皿に、「ドイツのための選択肢」がなっている。その不満につけ入る、むしろ焚きつけるような形でイーロン・マスク氏などが選挙介入を行い、大国の影響力を、全く違うものに変えてしまいたいという狙いがあった。これは、既存のヨーロッパの政治体制とか価値観とかに対する挑戦だという風にヨーロッパで見なされている」

トランプ大統領は、ロシアのG8復帰についても言及。

トランプ大統領(13日) 「(G8として)復帰してほしい。ロシアを排除するのは間違いだった」

ヨーロッパ政治に詳しい筑波大学・東野篤子 教授 「トランプ大統領の基本的な発想を見てみると、やはりこの世の中の問題、国際問題は力を持っているものが解決する。そして、その力を持っているものというのは、ロシアとアメリカだということだと思うんです。ここには彼の国際問題に対する解決方法が非常に如実に表れているんだと思う」

 ◇

高島彩キャスター 「ウクライナでの戦闘終結に向けては「奪われた領土」の行方がカギになってきますが、12日の時点でトランプ大統領は“ウクライナが2014年頃の領土を取り戻す可能性は低い”という見解を示しています。これはアメリカのヘグセス国防長官の「ウクライナが(南部クリミア半島を併合された)2014年以前の国境に戻ることは、非現実的な目標だ」との発言を受けてのものでしたが、その後ヘグセス国防長官は「ウクライナは、ロシアが侵攻する前(2022年)の領土を取り戻すことができるか?」との記者の質問に対して「全部あり得る」と、軌道修正とも取れる見解も示しました。柳澤さんは、停戦に向けた領土問題をどう見ていますか?」

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏 「ロシアが占領しているのは、2014年に一方的に併合したクリミア半島とウクライナの東部の地域です。一方、ウクライナがいま制圧してるのはロシアのクルスク州のごく一部なので、領土を巡る取り引きとはいっても明らかにウクライナが不利だということがよく分かります。もう1つはウクライナの安全を保障するためのNATO加盟を巡る問題なんですが、イギリスは「ウクライナのNATO加盟は不可逆的」で、時期は分からないけれども加盟は実現する見通しという見方なんです。一方のプーチン大統領はこれ絶対に認めない、トランプ大統領も極めて否定的で道筋が見えてこないという現状なんです。いずれにしてもウクライナにとって領土を巡る問題、それからNATO加盟を巡る問題、いずれも非常に厳しく先行きが見えない状況だと思います」

(C) CABLE NEWS NETWORK 2025

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