ウクライナ停戦をめぐり、トランプ大統領とプーチン大統領の首脳会談が早ければ今月末にも開かれる可能性があると、アメリカのメディアが伝えました。しかし、ウクライナ国民や前線の兵士からは当事者を飛び越えた停戦交渉に強い不満の声があがっています。
■「欧州参加させず」米露が停戦交渉へ
トランプ政権で停戦問題を担当するケロッグ特使。日本時間の16日未明、ロシアにも譲歩を迫る考えを示しました。 (ウクライナ・ロシア担当 ケロッグ特使)「ロシアの領土的譲歩が必要になってくる。プーチン大統領が不快に感じることを強いなければならない。ロシアはいま北朝鮮、イラン、中国と手を結んでいる。かつてなかったことだ。この連携を断ち切らなければならない」 ブルームバーグ通信は15日、アメリカとロシアの高官が来週サウジアラビアで面会すると伝えました。トランプ大統領とプーチン大統領による首脳会談を、早ければ今月末にも開催するために、その可能性を探っているといいます。一方、ケロッグ特使は、和平交渉にヨーロッパ各国を参加させない考えも明らかにしています。 Q.ヨーロッパは交渉の席につきますか? (ケロッグ特使)「その答えはノーです。私は現実主義なのでそれは起こらないと思います。」
■「頭越し」の停戦交渉 ウクライナ国民は動揺
ポーランドの外相は、17日にパリでヨーロッパの首脳らが集まる緊急会談の開催が計画されていると明らかにしました。 (ポーランド シコルスキー外相)「(トランプ大統領に伝えたいのは)戦争の終わらせ方次第では、アメリカの信用に関わる。ノーベル平和賞を管理しているのは我々ヨーロッパだということも言っておきたい。」 側近によれば、“ノーベル平和賞に執着”しているというトランプ大統領。 こうした動きをウクライナの人々はどう受け止めているのでしょうか? キーウを拠点に、現地の状況を日本などに発信するジャーナリストのボグダン・パルホメンコさんに聞きました。 (ジャーナリスト ボグダン・パルホメンコ氏)「今回のこのウクライナ戦争を止めることができれば、トランプ大統領は自分の名前を歴史の中に刻むことができます。ですのでこういう自分のエゴです。最初、このトランプ大統領が作った感情のジェットコースターというのが今回の(停戦交渉の合意)報道で生まれました。ですので我々ウクライナ国民としてはかなり動揺はしました。ウクライナも今まで頑張ってきたことっていうのは、自国のため以上にヨーロッパ含め世界の秩序のために頑張ってきましたから、トランプ大統領が1週間とかでたたみかけていますけど、これ(停戦)は実現しないよねっていうような理解がこの数日間でだいぶ広まりました」
■アメリカに鉱物供与 ゼレンスキー氏“拒否”
停戦協議の行方。そのカギを握るアメリカのバンス副大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が会談に臨みました。 (バンス副大統領)「目標はトランプ大統領が述べている通り、戦争を終わらせ、殺戮を止めることだ」 (ゼレンスキー大統領)「我々に必要なことはもっと対話を重ねて取り組むことだ。そしてプーチン大統領を止め、戦争を終結させる計画を準備することです」 ロシアとの戦争終結に向け、和やかに始まったようにみえた会談。しかしその裏では… (ワシントン・ポスト記者 複数のアメリカ代表団関係者の話)「将来的なウクライナの鉱物資源権益の50%をアメリカに与えるとする文書への署名を求めたが、ゼレンスキー氏は拒否した」 ウクライナの地中に眠るレアアースなどの希少な鉱物資源が“取引材料”に… ウクライナ政府が公表している鉱物資源地図。一部はロシア軍に占領されていますが、その価値は14兆8000億ドルにも及ぶと推定されています。トランプ大統領から“軍事支援の見返り”として資源の提供を求められていたゼレンスキー大統領。合意文書への署名を拒否した理由を、こう明かしました。 (ゼレンスキー大統領)「この文書には、安全保障に関する具体的なことは書かれていない。」
■米露が停戦交渉へ ウクライナ最前線部隊は
「空が汚いからまだ待たないと」 これはCNNが先月末、ウクライナ東部・ドネツク州の最前線を取材した映像です。 「撃て」 ロシア軍による攻勢にさらされ犠牲者が増えているという前線部隊。 「待て、もう一度その木を見よう」 「敵が塹壕にいるぞ」 「やれ、もう一度撃つんだ」 ドローンによる攻撃で対抗していますが… 「敵は川の向こうだ」 前線部隊の指揮官は… (ウクライナ軍 第66機械化旅団 ボロディミル・サブリン氏)「いま停戦しても我々の状況は悪化するだけです。敵は部隊を立て直し、再び攻撃してくるでしょう」 兵士たちは停戦の実現に懐疑的です。 Q.停戦が実現する可能性は? (兵士)「40%ほどだろう。敵軍が優勢だ。領土を広げている。我々は敵に対して何もできない。」 文字通り“命をかけて”ウクライナの領土を守ってきた兵士たち。停戦交渉の開始をどう思っているのでしょうか?ロシア軍の侵攻直後からハルキウ州の最前線などで戦ってきたゴロヴィンさんに聞きました。 (ウクライナ軍 第241独立領土防衛旅団 エフゲンゴロヴィンさん)「私は停戦には賛成ですが、彼ら(米露)が私たちを抜きにして、領土を取り上げるような合意をするのは反対です。私たちは自分の土地を譲るつもりはありません。私たちのものです。私たちは土地と人々のために戦っています」
ボグダンさんは、再びロシアが侵攻してこないような態勢を築くことが重要だと話します。 (ジャーナリスト ボグダン・パルホメンコ氏)「すべての領土を奪還というのは不可能だろうという考えは、ウクライナ国民がもうすでに感じております。そしてウクライナがNATOに加盟できないことも感じております。ただですねウクライナとしては自分の領土、つまり自分の土地、自分の家がいま他人が入ってきて、そこに住みついていると。そしてどんどんどんどん自分の家が侵略されていると。今後新しく、これ以上(領土が)とられないという保証はありますかと、その保証誰がしてくれますかと。今回のもしこのプーチンの手法がOKされてしまったら、今度全世界の国が同じことをやりますよ。だって結果的にアメリカの最高権力者がそれを許可したわけだから。」
2月16日『有働Times』より
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