富士山の噴火によって首都圏に大量の火山灰が降る事態への対策を議論する専門家会合は21日、降灰量が30センチ未満の場合は「在宅避難」を原則とする方針などを盛り込んだ報告書を公表しました。
2020年に国のワーキンググループが取りまとめた報告では、富士山で大規模な噴火が起きた場合、首都圏に約4.9億立方メートルの火山灰が堆積すると試算されました。
これは東日本大震災で出た災害廃棄物の量の10倍程度とされ、首都圏でも鉄道や道路での通行が困難になるほか、停電が発生するなどライフラインに深刻な影響が出る可能性が指摘されました。
こうした問題について対策を議論するため、去年7月に専門家会合が立ち上がり、今月21日に報告書が公表されました。
噴火した時の降灰量に応じて住民の避難行動などを4段階の「ステージ」に分類しています。
降灰量がそれぞれ、微量から3センチ未満の場合は「ステージ1」。
3センチ以上、30センチ未満かつ被害が比較的小さい場合は「ステージ2」。
3センチ以上、30センチ未満かつ被害が比較的大きい場合は「ステージ3」。
30センチ以上や土石流の危険がある場合は「ステージ4」としています。
このうち、降灰量が30センチ未満の「ステージ1」から「ステージ3」に該当するエリアの住民に対しては原則、自宅などにとどまって生活を継続するよう求め、30センチ以上の「ステージ4」に該当するエリアでは原則、避難を促す方針が示されました。
ただ、通院による人工透析や介護サービスが必要な人などは「ステージ3」でも避難を促すとしています。
そのうえで、自宅などにとどまり生活を継続するためには日頃からの備えが重要だとしています。
地震など他の災害と同様の準備に加え、火山灰への対策として防塵用のマスクやゴーグルを確保することが望ましいとしています。
想定する備蓄量については1707年の「宝永噴火」では2週間にわたり噴火が続いた例を挙げ、停電や断水のほか交通機関が止まることによる物資の不足が予想されることから、2週間分の備蓄を確保することが望ましいということです。
また、大量の火山灰の処理については住民の生活を維持・継続するため、道路や鉄道などに積もった火山灰を優先的に除去する方針が示されました。
そのうえで、火山灰を仮置きした後、埋め立てや緊急海洋投入など様々な手段を使って最終処分する方針も示されました。
ただ、大量の火山灰の処分場所を事前に確保しておくことは非常に困難であるとして、自治体や国などが連携し、あらかじめ仮置き場や最終処分場の候補地を選定するほか、必要な手続きなどの整理を行い関係機関と調整しておくことが望ましいとしています。
政府は今回の報告書に盛り込んだ対策は現時点の知見に基づくものであり、今後の研究や対策の進み具合によってガイドラインの「さらなる充実を図る」としています。
写真:Natsuki Sakai/アフロ