「アート」で世界的に有名になった瀬戸内。次は「デザイン」です。デザインの価値を広め、もっと活用してもらうことで地域産業を盛り上げようという催しが高松市で開かれました。
(記者) 「一口にデザインといっても、街で見かけるポスターから、商品のパッケージ、そして家具のデザインまで、私たちの身の回りのさまざまなところにデザインはあふれています」
香川県デザイン協会が初めて開いた「[平成]瀬戸内デザインアワード」。瀬戸内沿岸の7つの県在住、または出身のデザイナーや制作会社を対象に、平成の31年間につくられた作品を公募し表彰するものです。
平面、立体に加え、住宅建築などの空間デザイン、さらにはイベントやプロジェクトといった「体感デザイン」など7つの部門に、合わせて123点の応募がありました。
作品は9月13日、14日に展示され、一般投票で「部門賞」を決定。デザインや建築の分野で世界を舞台に活躍する特別審査員3人と、地域審査員4人が入賞作品を決めました。
最高賞である「グランプリゴールド賞」に選ばれたのは、高松丸亀町商店街の再開発を知らせる、2006年の新聞のラッピング広告。「洛中洛外図屏風」をモチーフに、城下町・高松の新たな姿を描き、新聞の1面を包むという、当時としては珍しい手法をとりました。
と…先にグランプリの作品を紹介しましたが、実は、展示・審査の方法をめぐって、特別審査員から厳しい意見が出たのです。
(特別審査員 GRAPHヘッドデザイナー/北川一成さん) 「平成のものを選べと言われたけど、選び方も平成だった」
展示された応募作品には、短く内容紹介のコメントがついているだけ。デザインされたものの「背景」が伝わらず、表面的な審査になるという点が指摘されました。
(特別審査員 建築家/谷尻誠さん) 「iPadを置いて映像流してもいいわけですよね、この展示」
([平成]瀬戸内デザインアワード 総合ディレクター/村上モリローさん) 「だめではないです」
(特別審査員 建築家/谷尻誠さん) 「そういう熱意がどこにもないというか、なんか自分の作ったものを置いてるだけ。デザイナーなのに履歴書を市販のもので出している就活と何も変わらない。本来、履歴書自体をデザインすべきだし、入れる封筒もつくるべき」
(特別審査員 GRAPHヘッドデザイナー/北川一成さん) 「(デザイナーは)与えられた課題に対して提案するだけではなくて、そもそもその課題を見つけ出すようなことがこれからは問われると思う」
(香川大学創造工学部[プロダクトデザイン]/井藤隆志 教授) 「今回は第1回の瀬戸内デザインアワードですけど、“ゼロ回”だと私の中での認識。“ゼロ回”が平成を振り返るということで、これからデザインは未来を語っていくことが重要ですから」
デザインアワードの総合ディレクターを務めた高松市のデザイナー、村上モリローさん。表彰式の時間を大幅に削って審査員との公開トークに充て、今回出た課題もさらしながら、「デザイン」のあり方を掘り下げました。
([平成]瀬戸内デザインアワード 総合ディレクター/村上モリローさん) 「デザインを発表して、それをみんなで話し合って、刺激を受けるという環境をそもそもつくりたくてこれをしたんです。地方で普通にやってたら絶対気づかない話がたくさん聞けたので、刺激しかなかったですね」
デザインで瀬戸内を盛り上げる。今回は、あくまでもその最初の「きっかけ」だと話します。
(村上モリローさん) 「きょう集まった人間たちで、どこかの街をつくろうというプロジェクトを立ち上げてみるとか、そういう意味でのアウトプットにつなげていきたい。で、それを発表する。だったら、ただ単にデザインがうまいか下手かだけじゃない。地域の人も『あぁデザインって役に立つんだな』と思ってもらえる」