香川県で行われている和三盆の副産物を活用したラム酒造り。その仕込みに新たに使うのは、かつて香川県の酒蔵で使われていた日本酒用の「木おけ」です。地域の伝統を活かして、新たな味わいを追求します。
木のおけに入った茶色い液体。これは香川と徳島で伝統的な製法が受け継がれている砂糖、和三盆を作るときに出る液体「糖蜜」です。この糖蜜は普段は捨てられてしまいますが、高松市の美馬宏行さんは妻の実家でもある「三谷製糖」の糖蜜を有効活用しようと「和三盆ラム酒」造りを考案。2019年には試作品も作りました。
そして8月、「和三盆ラム酒」を日本酒用の木おけで仕込むというチャレンジが始まりました。使うのは、一緒に試作品を作った西野金陵で60年以上前に使われていたおけです。
(西野金陵/酒井史朗 製造課長)
「まだ生まれていない時代に使っていた道具を縁があって使うことになった、というのは非常にロマンを感じるといいますか」
古いおけには、当時、日本酒を仕込んだときの酵母菌などが残っています。美馬さんはこの菌の働きによってよりおいしい「和三盆ラム酒」になるのではないかと考えています。
ただし、再び仕込みに使うためには修繕が必要です。今回は徳島県の2人の職人にその作業を依頼しました。木おけの職人は現在、全国に60人ほどしかいません。
(木おけ職人/湯浅啓司さん)
「結構古いんで縦にバーッと割れとう部分があるんやけど、いい木を使っとるなと削りながら思っとりました」
修繕では、木の表面を1枚1枚削ったあと、中の液が漏れないようにぴったりと組み合わせていきます。1日12時間以上、約1週間かけておけは組み直されました。
(木おけ職人/湯浅啓司さん)
「今度はまた美馬さんがお酒造っていかれるので、それに役に立つおけを作ろうと手入れさせてもらいました」
香川に帰ってきた「おけ」に糖蜜などを入れ、「和三盆ラム酒」の仕込みが始まりました。
(野口真菜リポート)
「温まった糖蜜は、まろやかでほんのり甘酸っぱい香りがします。職人の伝統の技術が詰まったこの『おけ』で糖蜜を発酵させていきます」
温度を調整しながら1週間ほど置いたあと蒸留機にかけます。木おけで仕込んだ和三盆ラム酒にはバーテンダーも期待を寄せます。
(バーテンダー/前川英俊さん)
「よりフルーティーなスピリッツが出来上がる。日本独特な木おけを使ってっていうところはいいんじゃないですか」
(和三盆ラム酒を考案/美馬宏行さん)
「たくさんの方々に協力していただいて、(伝統が)うまくつながって1つのお酒になるのかなと。すごく楽しみです」
木おけで仕込んだ「和三盆ラム酒」は2022年の春ごろには販売が始まる予定です。