閉鎖されて廃虚となっているホテルなどの近くに住む人からは安全面などで不安の声が上がっています。廃虚となっている施設の現状や自治体の対応などをお伝えします。
不法侵入者が後を絶たない倉敷市の「心霊スポット」
(記者)
「午後1時50分です。警察が男2人から話を聞いています」
2月20日、建造物侵入の疑いで男2人が現行犯逮捕されました。現場となったのはインターネット上などで「心霊スポット」として知られている倉敷市のホテル跡地です。
警察や施設管理者は2021年10月、有刺鉄線や立ち入り禁止の看板を新たに設置しましたが不法侵入者は後を絶ちません。
2022年に入ってもこのグループを含め5人が逮捕されています。警察によりますとサバイバルゲームや動画の撮影が目的だったということです。
(児島警察署/山室浩之 刑事官)
「ここへ侵入した者が新たな犯罪に巻き込まれることあります」
閉鎖から約25年が経ち廃虚となったホテルは犯罪の温床となる危険性も指摘されていて、近くの住民は不安を感じています。
(近くに住む人は―)
「ずっとほったらかしで下は荒れ放題で、前はちょっと火が出たりしていた」
「ずっと落書きが書いていてむごい。あれは倒れてくるんじゃないか」
さらに、ホテルの137メートルの展望タワーでは、ワイヤーが風に揺れることで甲高い音が鳴り続いています。
(町内会の会長)
「台風や強風が吹くと、ギターの弦のような状態で太鼓が響く感じで、それが騒音でみんなが困っている」
町内会では2021年3月、倉敷市へ騒音の問題と倒壊の恐れについて対策を要望しました。
しかし、倉敷市では「所有者が管理すべき財産のため対策は難しい。倒壊などの恐れがある場合はすぐに対応するが、たちまちの危険性はない」としています。
登記簿からは2003年に東京のリース会社が差し押さえたところまでは分かりますが、その後の所有者は分かりません。警察が把握している施設管理者に警察を通じて取材を依頼しましたが取材には応じられないとの回答がありました。
なぜ?水没したペンション跡地
瀬戸内市の牛窓地区にあるグリーンファーム跡地。
(記者)
「敷地内には徐行という看板が残されていて、かなり水没しているとみられます」
湖のように見える敷地には車が2台が沈み、ゴルフ練習場とみられる施設が崩れ落ちています。ペンションには水鳥が休憩し、木々にはカワウが巣をつくっています。いったいなぜこのような状態になったのでしょうか。
国土地理院が1980年に撮影した航空写真によると、1970年代に地元の企業が塩田跡地に作った施設で、以前は宿泊施設やテニスコートなどがなどがありました。
しかし、瀬戸内市によると2004年の台風による高潮で排水施設が壊れ、水没してしまったということです。近くに住む人は景観を損ねているだけでなく、生活にも悪影響が出ていると話します。
(近くに住む人は―)
「埋めてきれいにしてほしい。夏には蚊が湧いて困っている」
「臭いと虫が非常に多くて、食事とかするときもご飯の上に落ちてきたり、とてもひどい状態」
瀬戸内市では住民からの相談を受け、土地の所有者である会社に依頼文を送って排水などの適正な管理を求めています。
この会社はKSBの取材に対して「対策はしている」と回答したものの、具体的な内容を聞くことはできませんでした。
全国には「廃虚」を活用している事例も
神戸市の廃虚となったホテルに2021年期間限定でオープンしたお化け屋敷。
ホテルが営業していた当時の備品を使っていて怖さが増しています。
運営会社によりますと監視カメラを設置するなどしていて、施設の防犯対策にもつながっているということです。
2021年は約3700人が訪れたそうです。
(きもだメッセ運営会社/大福地元仁さん)
「廃虚ホテルなので防犯には注視してない。最低限の施しをした後はほったらかしにするのが現状。そういった意味で楽しんでいただきながら、廃虚の安心安全を確保している効果が見られ、やって良かった」
施設の持ち主が管理していくことが大前提ですが、地域の人の暮らしを守るために行政や民間でも知恵を出し合うことも必要です。