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【特集】香川・丸亀市の「3万円給付」を外部機関が検証 経済効果や市民の満足度は?

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 香川県丸亀市は2021年、新型コロナの緊急経済対策として市民1人当たり現金3万円を独自に給付しました。
 市は、この給付金事業について外部のシンクタンクに検証を委託し、2022年3月、その結果を公表しました。市長が選挙公約で掲げた10万円から3万円に減った給付額。経済効果や市民の満足度は?

2度の減額の末に実施された「3万円給付」

(丸亀市/松永恭二 市長[2022年3月])
「3万円、1人3万円でございますので、それなりに皆さんにとっては生活をする中で少し潤ったと言いますか」

 2022年3月29日、丸亀市の松永恭二市長が会見で語ったのは、自身が市長選で公約に掲げた目玉政策についてです。新型コロナ禍で苦しむ市民に向けた現金の給付。その実施には紆余曲折がありました。

(丸亀市/松永恭二 市長[市長選告示日 2021年4月11日])
「コロナ対策でやりたいことは全市民に10万円を支給するということです」

 2021年4月の市長選で現職を破って初当選を果たした松永市長。

 公約に掲げていたのが新型コロナの緊急経済対策として全市民に「10万円」を支給することでした。

(丸亀市/松永恭二 市長[2021年5月])
「10万円を、今の段階で一番いいのは5万円という形にしました。楽しみにしていた市民の方々には本当に申し訳ないという気持ちはございます」

 財源不足などを理由に議会に提案したのは支給額を公約の半額「5万円」にした予算案でした。さらに市議会の委員会では議員から効果を疑問視する声が相次ぎ、支給額が1人当たり「3万円」に減額修正されました。

 そして修正案の採決が行われる日。

(現金給付に反対する市民は―)
「現金ばらまきみたいなことはやっぱりよくない」
「品格に欠けてる、首長になる資質がない」

 市民全員に現金を給付するという市長の方針に反対する運動が市役所前で行われる中、2021年6月、採決の結果、市議会は3万円の給付の予算案を賛成多数で可決しました。

(丸亀市/松永恭二 市長[2021年6月])
「3万円になったことに対しては、皆さんにお詫びを申し上げますし、私の任期中には精一杯市民の皆さんのお役に立てるよう、利益になりますように取り組んでいこうと考えております」

 市が市民から申請を受け付けたところ、対象の98%に当たる4万9706世帯から申請があり、2021年10月までに給付しました。

(丸亀市/松永恭二 市長[2021年10月])
「これで、このお金をどんどん使ってくれたらいいのになぁ」

 公表された「検証結果」は?

 市の予算34億7600万円を投入して行われたこの給付金事業。丸亀市は、百十四銀行のシンクタンク「百十四経済研究所」に経済効果の検証を264万円で委託しました。

 調査は市内3000世帯にアンケートを送り1587世帯から得た回答を分析したもの。その結果をまとめた報告書を丸亀市が2022年3月、発表しました。

(丸亀市/松永恭二 市長[2022年3月])
「(Q.調査報告書についての受け止めは?)私が想像していた以上によかったなと考えております。98%を超える(申請があった)ちょっと驚異的な数字だったので、私が言わんとしていることは市民の方々も理解してくれたというふうには思っています」

 報告書では、給付金の総額約33億円のうち21億円ほどが丸亀市内で消費されたと推計しています。

 また、「家計への支援になったか」という質問に対しては、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」という回答が73.6%に上りました。

 これらを受けた総評として、市は「生活支援としての効果は十分にあり、市民満足度も非常に高かった」としました。

(丸亀市民は―)
「そう言うしかないんじゃない? 市としては。まぁ、トータルではよかったんじゃない?」
「お金のことですからね。ゼロよりはあったほうがいいっていう感じで」
「物価も上がってきよるからそんなには(支援になったと)感じなかったですけど……。まぁ、ないよりは全然いいですけど」

(記者)
「外部機関に委託した検証結果。これをひとつの材料にするのではなく、丸亀市はこの結果をもって事業の『総括』だとしています」

 アンケートの項目は、百十四経済研究所が提案し、丸亀市が確認した上で調査が行われました。

 給付金をどう使ったかや家計への支援になったかなどの感想を選択する形で、市の税金の使い方として今回の施策がよかったかどうかを聞く設問はありません。

 地方自治に詳しい香川大学法学部の三野靖教授は、「市がこの調査結果だけで事業の総括とすれば次につながらない」と指摘します。

(香川大学法学部/三野靖 教授)
「(今後)同じような施策をすることが丸亀市政にとってどういう効果を持つのか、施策の優先順位として果たして適切なのか。市民委員会的な形でざっくばらんに市民の意見を吸い上げるようなもののほうが次につながるんじゃないか」

記者質問「それ(アンケートによる調査結果)をもって『よかった』とするのも自己満足ではないか」
市長回答「キャッシュレス決済のポイント還元事業と生活困窮者にも支援を丸亀独自でやってきましたので、それと合わせての中で……まぁ、10万円まではいってませんけども、これは自己満足とかではなくて丸亀市独自でそういう方々に応援ができたという思いは持っています」

 2021年12月市議会で「この給付事業について使い道のアンケートだけではなく市民の意見を聞く機会を設けないのか」という議員の質問に対し、松永市長は「今後も市民の意見、提案はしっかりと聞いていく」と述べるに留まっています。

 また、三野教授は報告書からは「現金を配って何がしたかったのかが見えない」と話します。

(香川大学法学部/三野靖 教授)
「行政っていうのは継続性が大事ですから、10万円配りました、終わりました、それだったら誰でもできるわけです。継続的な丸亀市政をどう作っていくのか、子育て支援のための施策をどうやっていくのか、そういうところを中長期的に打ち出していくのが首長の役割。そういう少し俯瞰できるような行政運営、施策っていうのを打ち出していく責任が松永市長にはあるんだろう」

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