熱戦が続く夏の高校野球は、いよいよ終盤戦。高校野球などの中継に「人工知能・AI」を活用しよう、という試みが進んでいます。
高校野球・夏の香川大会が始まる2日前、香川高専詫間キャンパスの学生たちが球場を訪れました。目的は野球、ではなく――。
(香川高専詫間キャンパス/山田斉さん)
「現在、人間が手入力しているBSO(ボール・ストライク・アウト)と球速、この2つを(AIで)デジタル化しようとしています」
野球中継では必ずといっていいほど、ボール、ストライク、アウトのカウントが表示されます。通常は「人の手」で入力していますが、これを「AI」を使って「自動化」できないか、という取り組みです。
自動化のカギを握るのが、バックスクリーンの「スコアボード」。
(香川高専詫間キャンパス/山田斉さん)
「ストライクになったときに(スコアボードの)ライトが点灯しますので、そちらをカメラで見ることによってストライク(のライト)がイチついたな、ということをみようとしています」
スコアボードをカメラで撮影し、「BSO」の状況をそれぞれ読み取るというわけです。
そもそもスコアボードには実際どうやって表示しているのか。丸亀市スポーツ協会の山中達也さんに教えてもらいました。
(丸亀市スポーツ協会/山中達也さん)
「こちらの判定操作盤なんですけど、カウントをスコアボードに表示する機械になっています。ストライクやったらストライク(のボタンを押すと)スコアボードに映ります」
1つのボタンが1つのランプ表示に対応していて、審判の判定をみながら操作します。ピッチャーの投げるペースにもよりますが、10秒に1回ほどは操作するそうです。
ちなみに右上のボタンを押すと……。
(丸亀市スポーツ協会/山中達也さん)
「試合開始のときと試合終了のサイレンをここで押しているんです」
操作方法を学んだ学生たちは、さっそくボール、ストライク、アウトの全パターンを撮影しました。
これをAIの学習にどう使うかというと……。
(香川高専詫間キャンパス/山田斉さん)
「3ボール1ストライクとか、その画像がどういうBSOなのかっていうのを人間が手作業で(正解の)タグをつけていく」
BSOの表示部分だけを切り出した画像を作成し、人間がその画像を見ながらボール、ストライク、アウトの正しい値を付けます。これをタグ付けといいます。AIはこのタグ付けされた画像を学習するというわけです。
さらに、効率化のためにひと手間加えて――。
(香川高専詫間キャンパス/山田斉さん)
「画像が大きすぎるとコンピューターに負荷をかけてしまうので、できるだけ小さい画像にするんですよ。例えば、100ピクセル×100ピクセルくらいにしてあげると、それなりにすばやく処理ができるので」
より多くのデータを集めるため、大会期間中も撮影を続けます。
(香川高専詫間キャンパス/山田斉さん)
「今危惧しているのは、天気が変わったときとか雲が陰ったときにどう精度が落ちるのか、はたまたそもそも判定できなくなるのか」
時間帯や天候が変わっても対応できるように、なるべく多くのデータをAIに学習させることで精度を上げていきます。
また、学生たちは「BSO」に加えて、スコアボードに表示される「球速」の読み取りにも挑戦します。
学生たちは高松市のレクザムスタジアムにもカメラを設置し、2球場分のデータを収集しているそうです。球児たちの熱戦の裏でこちらも熱い戦いが続いています。