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【解説】進む河川の整備 合流点付け替え工事は進捗率81% 被災の教訓生かし「備え」も忘れずに 岡山〈西日本豪雨から5年〉

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 西日本豪雨から5年。国と岡山県、倉敷市は連携して「真備緊急治水対策プロジェクト」取り組んでいます。
 このプロジェクトでは、倉敷市真備地区を流れる高梁川や小田川などの堤防の強化や、流れをよくするための川の掘削などが行われてきました。そして、最も大きな事業が2019年から進められている「小田川と高梁川の合流点を下流に付け替える」工事です。

進む河川の安全対策

 倉敷市真備町箭田の「マービーふれあいセンター」。こちらのカフェで提供しているのが「南山掘削カレーです」。小田川と高梁川の合流点付け替え工事をイメージしたカレーです。

 ライスは特製の型を使い、工事で削られた「南山」の形に地元で採れた野菜を盛り付け。3日かけて作るこだわりのスパイスカレーで、新たな小田川の流れを表しています。工事で取り除かれた、お城の跡を示す旗も忘れずに……。

(マービーカフェ/丸川 和子 副店長)
「記憶というのはだんだんと薄れて風化していくので、記憶を記録として残す必要があると思うんですけど、マービーカフェは飲食店ということもあり、メニューとして残していければ」

 工事を担う河川事務所と地元の商工会青年部が共同開発し、マービーカフェが引き継いだ「復興グルメ」。

 西日本豪雨の翌年に始まった合流点付け替え工事は、2023年度、完了する予定です。6月21日には小田川の新たなルートを確保するために南山を削る工事が完了しました。

 現在の合流点は南山の付近にありますが、全ての工事が完了すると、小田川と高梁川の合流点は約4.6km下流に移ります。総事業費は約474億円、現在の進捗率は81%です。

(高梁川・小田川緊急治水対策 河川事務所/濱田靖彦 所長)
「最後は出水期あけ、10月の終わりから11月ぐらいにかけて、新しい小田川に水を流しながら、高梁川と小田川の流れを分離する工事に入っていきます」

 この2つの川の合流点付け替えを巡っては、2010年には整備計画が策定されていて、当初は2018年の秋に工事が始まる予定でした。しかし……。

(記者[2018年7月8日])
「こちら、倉敷市の小田川が決壊したという現場です。堤防が崩れて水の中に沈んでいます」

 着工を控えた2018年7月、西日本豪雨によって小田川やその支流、合わせて8カ所で堤防が決壊。川沿いの倉敷市真備地区に深刻な浸水被害をもたらしました。

 河川工学の専門家は、当時、小田川と高梁川の合流点で起きたある現象が、氾濫を引き起こす要因の一つになったと指摘します。

(岡山大学[河川工学専門]/前野詩朗 特任教授)
「バックウォーター現象というんですけど、小田川の勾配が、合流点付近が非常に緩やかなんですね。(大雨で)合流点の水位が上がると小田川の数km上流にわたって、水位を上げてしまいます。そうすると、小田川で堤防決壊の危険性が高まって、当時は堤防を越えるような水が来たということです。小田川の水位が上がると今度は支川にも影響が出るんですね」

 合流点付け替え工事には、小田川から高梁川への流れをスムーズにし、水位を下げることで「バックウォーター現象」を抑える狙いがあります。

(高梁川・小田川緊急治水対策 河川事務所/濱田靖彦 所長)
「西日本豪雨と同様の雨に対しては安全に流すことができる、今より安全度は向上します。しかしながら、最近の災害は頻発化、激甚化しているというふうに思っています。ですので、過信せずに危ないと思ったら避難する」

 合流点付け替え工事は当初の計画よりも5年工期を短縮し、2023年度完成する予定となっています。

被災の教訓生かし備えを

 「ハード面」の対策は大詰めを迎える中、今後大きな被害を防ぐためには一人一人の防災意識を高める「ソフト面」での対策も重要です。

(川辺復興プロジェクト あるく/槙原聡美 代表)
「この辺り一帯見渡す限り、全部浸かっていた所になるので本当にこんなにまたきれいになるなんて、あの時は想像もつかないぐらい泥まみれの街になってしまったんですけど」

 浸水被害を受けた倉敷市真備町川辺では、地区のほぼ全て、約1700の住宅が全半壊となりました。

 被災を機に結成した住民グループ「川辺復興プロジェクトあるく」は、地域のつながりを深め、安心して暮らせるまちづくりに取り組んでいます。

 中でも重点を置いているのが、「防災」に関わる活動です。

(川辺復興プロジェクト あるく/槙原聡美 代表)
「河川の工事に関しては、本当に大きなしっかりとした工事を進めてくださっていますので、もちろん完成することに大きな期待を持っています。しかし、ハードだけでは命を守れないと思っています。最終的に私たちが災害から身を守ろうという意識が、命と心を守ってくれるものだと思っています」

 「あるく」ではこれまで、住民が気軽に交流できる「防災カフェ」や、子育て世代の被災者の声を集めた「防災おやこ手帳」の作成に取り組んできました。

 また、川辺地区のほぼ全ての世帯に安否確認のツールとして「黄色いタスキ」を配布。住民同士が声掛けをしやすい仕組みを作り、「逃げ遅れゼロ」を目指しています。

(川辺復興プロジェクト あるく/槙原聡美 代表)
「死ぬかもしれないというような経験をしてしまうことが、そのあとの長い生活の中でとても大きく影響すると感じているんですね。念のためにとまずは思っていただいて、避難の準備、そして避難が必要になった時には早めの行動を心掛けていただきたいと思います」

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