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【特集】水の流れが悪くなる「樹林化」防止へ 豪雨で堤防決壊の小田川を守る“民間の力” 岡山・倉敷市〈西日本豪雨から5年〉

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 西日本豪雨からまもなく5年。岡山県倉敷市真備地区では、豪雨で小田川の堤防が決壊しました。川の安全を維持する取り組みが、国だけではなく住民や企業など「民間の力」によっても進められています。

 倉敷市や井原市などを流れる1級河川、小田川。河川敷の中でひときわきれいに草が生えそろっている場所があります。

(美星ミート/三宅達夫 社長)
「これがイタリアンライグラス(牧草)です、ちょうど穂が出て。うちは和牛の繁殖と肥育をしているので、母牛に与えています。(Q.牛にとっておいしい?)それはもう1番です、これがないと牛は飼えないです」

 井原市で牧場を営む三宅さんは小田川を管理する国の許可を得て、2017年から他の2つの牧場と協力して河川敷で牧草を育てています。

 この日は、収穫。重機2台で刈り取っていきます。三宅さんたちの牧草地の広さは上流の井原市から下流の倉敷市真備地区まで、約53haだそうです。

 刈り取った牧草は3つの牧場で飼っている肉牛や乳牛の餌にしています。そして、河川敷を牧草地として活用することは小田川の維持管理にもつながります。

(美星ミート/三宅達夫 社長)
「ごみとか雑木が引っ掛からなくなった。牧草を作りだして、水が流れるのできれいになったと、近くの人から結構言われます」

 2018年の西日本豪雨の後、7月10日に撮影した映像では、小田川の中は森のように木が生い茂っています。これは「樹林化」と呼ばれています。

 「樹林化」は西日本豪雨の被災者が国などに損害賠償を求めている民事裁判でも争点の1つになっています。

 原告側は、小田川の樹木が生い茂ったことで水位を最大で69cm上げていたという国交省の元職員の試算を示し、「国は伐採をしなければならなかった」と主張。国側は「伐採する義務はなかった」としています。

(岡山大学[防災水工学など]/赤穂良輔 准教授)
「河川の樹林化は全国的に課題として考えられていて、洪水のときの水が流れにくくなる、水位が上がってしまってその分リスクは高くなるというような影響がある。あるいは樹木が流れてしまって橋に積もって、そこからあふれてしまう、そういったリスクも発生しうる」

 西日本豪雨の約2週間後、台風の接近もあり、国は、小田川の中の木々をほとんど伐採しました。その後も計画的に伐採を続けているほか、民間の力も借りています。

 河川敷で牧草を育てる三宅さんたちの取り組みもそのうちの1つです。

(美星ミート/三宅達夫 社長)
「うちの従業員も(豪雨で)家が浸かったんですけど、前向きに頑張ってきています、かえって勇気をもらいました。小田川のほとりを通ると、『きれいになったね』と言われるのが本当にうれしいです」

 三宅さんたちは、西日本豪雨の後、真備地区での活動の範囲を大幅に広げ、複数の河川敷で取り組みを進めています。そして、河川の樹林化を防ぐ取り組みは真備町箭田地区でも行われています。

 「マレットゴルフ」と呼ばれるスポーツ。真備町箭田地区の住民らでつくる「まちづくり推進協議会」が2019年から小田川の河川敷で週に1回行っています。

 協議会がマレットゴルフを行う大きな理由は、プレーの前の草刈りです。協議会は他にも樹林化を防ぐ活動を継続的にしています。

 国は、2020年3月、河川の維持や環境保全に協力する「河川協力団体」に協議会を指定しました。

(箭田地区まちづくり推進協議会/藤田敏郎さん)
「樹林化防止でなんとか川を守ることをみんなでやろうじゃないかと。健康管理で楽しくやっていれば、相乗効果もあるのかと」

 西日本豪雨からまもなく5年――。

(在間隆真リポート)
「この辺り、かなり高さのある木が映っています」

 小田川には、成長した木が生えている場所も出てきました。

(高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所/濱田靖彦 所長)
「牧草地として利用できるような場所も、まだ小田川にはあると思っています。維持管理につなげられるようなことはやっていきたいと思っています」

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