ファジアーノ岡山はJ1での戦いから1カ月以上が経過しました。最高峰の舞台での戦いは、岡山の街への影響と課題も見えてきました。
ここまでリーグ戦6位と初挑戦のJ1で堂々たる戦いを見せるファジアーノ。開幕から1カ月が過ぎ……。熱量と注目度は増すばかりです。
(中学生)
「(Q.学校でファジアーノは話題に?)めっちゃ多いですね、男子たちが『俺はガンバファンだから』『川崎だから』とか、お前には負けないぞってずっとあおってきます。(去年までは)全然なかった」
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「良くお聞きするのは、タクシーの運転手と散髪屋がこれまで大谷翔平さんの話しかしなかったのに、急にファジアーノの話をしだしたってお聞きして、うれしいなと」
初のJ1は「観光面」でも……。
(JR西日本岡山支社/林秀樹 支社長[支社長会見 21日])
「肌感覚としては、アウェーで来てくださる県外のサポーターの方々が非常に増えているという実感はある。非常に大きなインパクトがある」
ファジアーノは今シーズン、アウェー席を約2000席に増やしましたが、7試合中6試合で「完売」。J2時代にアウェー席の完売はほとんどありませんでした。
(川崎サポーター/初めて岡山に[20代])
「(前日に)倉敷に行って、さっき岡山城に行きました。もう1日本当は行きたいぐらい楽しかった」
(川崎サポーター/初めて岡山に[中学生])
「遠いところとか行ったことのない所に行くのはちょっと楽しみだしワクワクする」
29日の横浜F・マリノスとの一戦。岡山の観光地には試合前はもちろん……。試合翌日にも、ユニホームやグッズを身に着けた多くのサポーターの姿がありました。
(マリノスサポーター)
「ままかり、鯛めし、黄にらも食べました」
「えびめし食べました。街並みもそうですし、パフェがおいしいって聞いたので食べたいのと、コロッケも楽しみにしてます」
中にはこんな人も……。
(2泊3日で前日は香川に/マリノスサポーター)
「日程が出たとき(去年12月)に新幹線とホテルの予約を入れてました。対戦しないと行かないかもしれないなって地域ももちろんあるので、地元の物を食べて地元の観光地に行ってってことでJリーグ全体が盛り上がれば一番楽しいかなって持っているので」
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「Jリーグのサポーターの方々は発信力の強い方々が多いんじゃないかなと思っている。そういった方々が岡山の街で過ごして、岡山の街が良かったと発信してくださるとそれはまた大きなさらに目に見えない価値になる」
話を聞いたサポーターのほとんどが岡山県に初めて来たとのこと。
ファジアーノによると、2013年から昨シーズンまでのホーム戦250試合で訪れたアウェーサポーターは約7万6000人。それが今シーズンはここまで5試合で約1万1000人に。
もしこれからもアウェー席の完売が続くのであれば、1シーズンで訪れるアウェーサポーターは4万人ほどになります。前回の瀬戸内国際芸術祭で県内外から宇野港周辺を訪れた人数約3万5000人をも上回る数字です。
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「もし仮にもっとチケットをアウェーのサポーターに売れるのだとしたら、1時間程度で完売している現状を踏まえると4000人、5000人の方が、月に2回必ず来てくれるというようなことを考えると、私たちにとってはすごく大きな経済効果になるんじゃないかなと」
目に見える形で現れたJ1効果。しかしクラブは……。
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「私たちにとっては悔しいし。すごく歯がゆい思いを感じている」
29日の試合中、スタジアムの外にはユニホーム姿の男性が……。
(2児の父親[30代])
「甥っ子で6歳、(子どもが)4歳、2歳。(夫婦で)チケットが取れているので、本当はもう1枚チケットがあるので、入れれば入りたいんですけど、ここで遊ばせながら音を聞きながら外で(配信を)見るようにしている」
こちらの男性。これまでは子どもと一緒にスタジアムで観戦していましたが、今シーズンはそれが難しくなったと言います。
(2児の父親[30代])
「子どもの分も取れればゆったり座れるので取りたいんですけど、なかなか取れないですね。子どもを連れてきたくても難しいですよね」
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「一番大きいのは、見たくても見られない方が出てしまっているってことだというふうに思っています。岡山の皆さんに日本最高峰のサッカーの試合見ていただくってことを念頭に置いてここまで活動してきたんですけれども、それが十分に行き渡らせることができない」
クラブが頭を悩ませているのが「ホーム戦のチケット問題」。
2024年までの16シーズンでチケットが完売したのは6試合。しかし、今シーズンはこれまで販売した7試合全てでホームエリアが完売となりました。
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「シーズンパスが完売したのは予想していなかったです、ただ(ホーム戦が)売り切れるのは多分10年前からずっと言ってました。いま非常に私たちとしてはチャンスだと思っている中でこのキャパシティーでの開催は非常に難しさを感じているところ」
ファジアーノによるとJFE晴れの国スタジアムの収容人数約1万5500人に対し、今シーズンはシーズンパスなどで約9000枚が一般販売前に売れている状態に。
残りの6500枚に対し開幕戦のチケット販売サイトには約2万3000ユーザーがアクセスしたということです。
見たくても見られない。この影響は「クラブ理念」にも。
(試合日はボランティア)
「(Q.お子さんの数とかどうですか?)だいぶ減ったように思います。以前は本当に子どもさん多かったんですけど、今年はチケットを買わないと入れないので、その分少ないかなと思います」
小学生以下が当日の受け付けでも無料で観戦できる「夢チケ」。2008年に誕生し、昨シーズンは1試合あたり700人ほどの子どもが使っていました。しかし、今シーズンはチケットの販売状況からこれまでの運用が困難だとし、事前申し込みの300席限定と制度が大幅に変わりました。
(これまで夢チケを利用/2人の小学生の母親)
「痛いです。試合は絶対行きたいので300枚とか当たらないかなと思って思い切ってシーズンパスを買った」
(姉妹で幼少期から応援)
「私も子どものころから見ていまも好きなので、実際に見てほしいなっていうのは思う」
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「非常にいま、子どもたち・小学生の入場者数が少なくなってきている現状がある。気軽にとはほど遠い状況になっているのかなと。それはすごく悔しいなという思いがある」
日本政策投資銀行はファジアーノのJ1昇格による岡山県への経済波及効果はJ2時代の約1.8倍の54億円だと試算しています。
「この街と挑む」最高峰の舞台での戦い。「子どもたちに夢を」を掲げ続けてきたクラブの目指す未来は。
(ファジアーノ岡山/森井 悠 社長)
「このクラブが岡山の誇りとなる存在になることは大事にしたいポイントだと思うし、そのためには頂上を目指さなければいけないと思いますし、その頂上を目指すために本気で大人たちが努力している姿勢が子どもたちに伝わって、それがどんどん未来を作っていくものだと信じている。全身全霊でクラブ一丸となって努力していきたい」