岡山県吉備中央町のカフェに「心を込める」ことを大切にバリスタをしている少年がいます。3月に小学校を卒業したばかりの彼の将来の夢とは。
途切れることなくお湯を注ぐと、コーヒーの豊かな香りが広がります。コーヒーを入れているのは笹田渉さん、12歳。3月に小学校を卒業したばかりです。
(笹田渉さん)
「心を込めて入れます」
笹田さんは、両親が吉備中央町で経営するカフェ、「オーガニカコーヒィ」で学校が休みの週末などにお手伝いをしています。
(笹田渉さん)
「コーヒーが好きになったきっかけは、昔、父と母がオーガニカコーヒィでコーヒーを入れていたのが面白そうだなと思ってやってみたくなりました。苦いなとは正直思いますね。コーヒー独自の味があって、1つ1つのコーヒーが味が違ってくるので、面白いなと思います」
笹田さんがドリップで1番こだわっているのは「お湯の注ぎ方」。
(笹田渉さん)
「細く入れて、円が途切れないようにしてます。(そうやって入れると)雑味とかえぐみとかが無くなったり、まろやかなコーヒーになったりします」
コーヒーに深みを出すため、じわじわと均等にお湯を注ぐのは大人でも難しいそうで、客に出せるようになるまで練習を重ねました。
また、お湯の温度についても……。
(笹田渉さん)
「コーヒーを入れるお湯の温度を調節しています。コーヒーは84℃で入れます」
1℃単位まで細かく測っています。
コーヒーを入れ始めたときは小さなポットを使っていたそうですが……。
(笹田渉さん)
「(今は)このポットですね。慣れれば結構持ちやすいポットなので、これでやっています。たくさん入れるってなったらまた熱湯を入れて 調整しないといけないので、そこの時間がもったいない」
笹田さんの父で焙煎士の、亮さんは……。
(笹田さんの父/笹田 亮さん)
「始めは結構不安もあってですね、子どもが入れることについてお客さんがどう思うとかもあって。おいしいですよ。なんか柔らかい感じに 入るんです。人によってコーヒーって味が変わってくるんです。やっぱり気持ちがこもってるからじゃないんですかね」
そんな笹田さん、コーヒーを入れるだけでなく、接客も手伝っています。
笹田さん「店内でお召し上がりでしょうか」
お客さん「ウガンダのブラックで」
笹田さん「ウガンダがお1つ……。すみません、きょうウガンダないんです。深煎りはブラジルなんですけど……」
お客さん「じゃあブラジルで」
笹田さん「ブラジルがお1つ」
お客さんが注文したコーヒー豆が切れていましたが、同じように焙煎時間が長く苦みが感じられるという「深煎り」のコーヒーをすぐに提案しました。
(笹田渉さん)
「お待たせしました。ブラジルのホットになります」
(お客さんは―)
「(大人と)遜色ないですね。接客が丁寧なんですよ。そこが雑じゃないから、これもおいしく感じるんですよね」
「ほんとにまろやかで、おいしいです。バリスタですよね」
お客さんの評判も上々です。
(笹田渉さん)
「飲めるようになったとか、コーヒーを元々飲めなかった人が。それでおいしかったとか言われたりしたらうれしいです」
笹田さんは豆についても詳しくなりました。
(笹田渉さん)
「ネパールは黄桃のようなフルーティなコーヒーです。すごく香りも良くて、自分は好きなコーヒーです。ミャンマーはキャンディのような 香りがするコーヒーです。ブラジルは上質な苦みです。ドリップしてみれば結構フルーティな香りもします」
豆の種類や焙煎の度合いで生まれる香り、味わいの違いを客に説明することもあるそうです。
(笹田渉さん)
「『この豆どんな味?』とか聞いてくれて答えるのとか、その時飲んだコーヒーの豆を買ってくれたりしたら結構うれしいです」
笹田さんの夢はドリップの技術などを競う全国大会でチャンピオンになること。そして……。
(笹田渉さん)
「ネパールでコーヒーの仕事をしたい」
笹田さんは6歳ごろから父、亮さんが豆の買い付けや豆の苗を植えるためにネパールに行くのについて行っていました。
(笹田渉さん)
「ネパールでの仕事は、主にコーヒーを育てるのとか、(豆の)精製とか、日本に送る仕事ですね」
夢に向かって、このカフェで、1杯1杯に心を込めています。
(笹田渉さん)
「コーヒーを入れて、笑顔になって帰ってもらえるのがうれしいと思います」