今回の解説は「コメの生産」についてです。国が公表した2025年の水田の作付け意向調査によると、主食用のコメは40万t増産し、過去5年間で最大の生産量となる見込みです。
一方、畜産に使う飼料用のコメや稲の生産は減る見込みで、岡山県でも、飼料用などのコメから主食用に転換する農家が相次いでいます。
農家「飼料用米作っても何にもメリットがない」
総社市で40年以上コメを生産している専業農家、光畑豊さん。2024年までは約13haの農地のうち4割ほどに当たる5.5haで、畜産でエサとして使う飼料用のコメを生産していました。しかし、2025年は全て主食用のコメに切り換えます。
(コメ農家/光畑豊さん)
「理由はもう、何にもメリットがない。飼料用米作っても。(主食用の)コメが高くなったし、補助金はだんだん下がってくるし」
国は牛・豚・ニワトリなど家畜の餌となる飼料用米の作付けする際、農家に補助金を出しています。
そのため、飼料用米は販売単価は安いものの、補助金を含めると農家には一定の手取りがありました。しかし、頼みの綱の補助金が年々引き下げられています。
2024年度、作付面積10aあたり7.5万円だった補助金の標準単価は、2025年度7万円に、さらに2026年度は6.5万円になります。
一方で、主食用のコメは買い取り価格が高騰しています。
JA晴れの国岡山によりますと、総社市では2024年、光畑さんを含む17戸の大規模農家が約86haで飼料用のコメを生産していました。2025年はほとんどの農家が飼料用米の生産をやめて、主食用のコメに転換する見込みです。
(コメ農家/光畑豊さん)
「その時その時で臨機応変に、どれがいいか比べて。こっちも生活がかかっとる。飼料用米がいる人には気の毒だけどな……」
(JA全農おかやま/宰務研吾 農産課長)
「数がどうしても確保できないというところがありますので、影響がもう……大きな影響があると思います」
岡山県で生産される飼料用米の半分ほどを扱っているJA全農おかやまは、飼料会社に販売する分の調達が課題だとしています。
2025年4月末時点で国がまとめた全国の水田の作付け意向調査によると、岡山県の2025年の主食用のコメは増産に。一方、飼料用のコメは大幅な減産の見込みです。
そして、もう一つ。同じく水田で作られ、牛のエサになる飼料用の稲に「WCS」があります。酪農家はWCSも減産になるのではないかと懸念しています。
酪農家「自助努力はもう限界」
岡山県勝央町の檜尾牧場では、乳牛約110頭を飼育しています。毎日1頭にアメリカから輸入した牧草を8kg、岡山県産のWCSを6kg与えています。
岡山県の畜産関係者らは輸入牧草に頼らず県内で餌を調達できる環境を作ろうという取り組み、県産のWCSの生産量は近年、右肩上がりでした。
しかし、この牧場の経営者で、おかやま酪農業協同組合の会長を務める檜尾康知さんによりますと、2025年は主食用のコメの生産に流れ、WCSの作付け面積は減るとみられます。
(酪農家/檜尾康知さん)
「今でも足りてない状態なのに、さらにまた足りない状態になるので、WCSを使うことによって、コストを下げるとか、飼料の自給率を上げるとかやってきたことがまたまた逆戻りする」
アメリカ産の牧草の価格は円安の影響などで高騰していて、檜尾さんの牧場ではもしも岡山産のWCSを全て輸入牧草にかえた場合、年間で150~200万円の経費が増えるそうです。
もともとロシアによるウクライナ侵攻でトウモロコシを中心とした飼料が高騰している中、さらなる痛手になる可能性があると話しています。
(酪農家/檜尾康知さん)
「この3年くらいで死に物狂いでコストダウンはしてきたはず。自助努力はもう限界かな……」
専門家「行政やコメ農家に左右されない経営を」
コメの流通に詳しい流通経済研究所の折笠俊輔さんは「畜産農家は、行政の施策やコメ農家の動向に左右されない経営が必要」だと話します。
(流通経済研究所/折笠俊輔 主席研究員)
「補助金があるから成り立っていた飼料用米とか、WCSもそれに近い部分がありますので、畜産農家側のコントロールがきかない話になっちゃう。コメ農家に頼らないというか、畜産農家さんがどう主導していくのかというのが今後必要かもしれない」