11月21日、岡山県瀬戸内市のハンセン病療養所「長島愛生園」に体験型の新しい資料館がオープンします。
来場者を迎えるのは、長島愛生園から見える瀬戸内海の風景。11月21日にオープンする「でんしょう愛生館」は、ハンセン病や療養所の歴史について学べる体験型の資料館です。
最初に案内されるのは「はじまりの部屋」。療養所に今も残る「旧収容所」を再現したものです。ここではかつて、入所する人の手続きや診察などが行われていました。
(昔の医療従事者に扮した職員)
「本日はでんしょう愛生館へご来館いただきありがとうございます。ここでは皆さんに偽名を名乗ってもらいます」
(記者リポート)
「私の名前は吉岡ですが、こちらには『吉川』と書きました。ハンセン病療養所に入所した人は、家族に差別や偏見がおよぶことを恐れて、偽名を名乗っていたといいます」
ハンセン病は、感染力が非常に弱い病気ですが、かつて国は法律を定め、患者を強制隔離しました。戦後には完治する病気になりましたが、入所者やその家族はいわれのない差別・偏見に苦しんだのです。
VRシアターでは、当事者や周囲の人の目線を通して「ハンセン病問題」を知ることができます。
(長島愛生園歴史館/田村朋久 学芸員)
「入所者が高齢化していく中で、言葉や思いを直接聞く機会が難しくなる。そういったものを展示で感じていただけるようになれば」
「追憶の森」では、差別・偏見の解消を願って、最初に長島愛生園に入所した約80人の名前や生年月日、出身地などを紹介しています。
入所者の中には、今も偽名を名乗っている人や本名を明かせないまま亡くなった人が多くいます。入所者の平均年齢が89歳を超え、今は自治会長の中尾伸治さんが唯一の語り部を務めています。
(入所者自治会/中尾伸治 会長[91])
「全国で600人ほど入所していますけど、1人もハンセン病の人はいない、しかし偏見・差別がある。そのために本当に生涯、療養所で生活しないといけなかったし、家族との絆も消えてしまった。再びこんなことがないようにしてほしい」