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【解説】香川地区で15年ぶり タクシー運賃「値上げ」へ 事業者から困窮の声

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 香川県の多くのタクシー事業者が声をあげ、消費税率引き上げを除いて15年ぶりに決まった運賃の値上げ。新型コロナや燃料費の高騰で苦しむタクシー業界の現状や、生き残りのための新たな取り組みをお伝えします。

 タクシーの運賃は地区ごとに「上限」が定められています。香川地区の場合は1.5kmまでで小型車が「640円」、中型車が「650円」です。

 2022年5月から8月にかけて「香川地区」の事業者から四国運輸局に対して運賃の上限を引き上げるよう申請が相次ぎました。

 申請したのは香川地区のタクシー車両1367台のうち86%を保有する54社。「総車両数の7割」という国の基準を超えたため、四国運輸局が検討した結果、「値上げが必要」と判断しました。

 消費税率の引き上げによるものを除けば「香川地区」の値上げは15年ぶり。声をあげたタクシー事業者の現状とは?

15年ぶりの値上げ コロナと燃料高騰で困窮

(タクシー運転手は―)
「ちょっと今の料金では安すぎると思うんで、今から10年たったらタクシーどうなるやら分からない」
「乗る方が少ないんでね。利用者多かったらそうでもないかもしれないですけど」

 高松市木太町のハロータクシーは今回、香川地区で最初に「値上げ」を申請した事業者の1つです。

(ハロータクシー/寺師大祐 社長)
「今まではどうにか運賃上げずに活性化していけたらと。サービス面での取り組みを中心にやっていたけれどもそれも正直限界がきたところ」

 新型コロナ禍で利用者が減る中、追い打ちをかけたのがタクシーの燃料「LPガス」の価格高騰です。

 ハロータクシーは49台の車両を持っていて1台あたり1日約200kmを走ります。

 石油情報センターによりますと2022年7月時点のLPガスの1リットルあたりの価格は3年前と比べ3割以上高くなっています。(2019年7月 86.7円→2022年7月 116.3円)ハロータクシーの場合、1カ月にかかる燃料費は3年前より約120万円も増えているといいます。

(ハロータクシー/寺師大祐 社長)
「過去にはない値上がりですので経営としてはかなり難しい」

 タクシー事業者は新型コロナ禍前から厳しい経営を強いられていて、事業者の間で「運賃改定」についての意見交換会や勉強会を開いていました。

 今回、各社からの申請を受けて四国運輸局は「値上げが必要」と判断しましたが、どこまで上げるかは事業者の収支などを基に運輸局が検討します。

(香川県タクシー協同組合/岡千人志 専務理事)
「各社の思いは申請で出すんですけれど、『私のところ20%上げたいんだけど』ってふたを開けたら、10%の改定率でした。そんなところでがっくりするところもありますけど、少しでも上げていただきたいなと」

タクシー運賃いくらまで上がる?

 改めて、現在の香川地区の初乗り運賃の上限は1.5kmまで小型車で「640円」、中型車で「650円」です。ちなみに神戸市を含む神戸・阪神間地区や広島市を含む広島県A地区は「660円」です。

 大きく変わらないようにも見えますが、香川県タクシー協同組合の岡専務理事は「それらの都市に比べ、香川は人口も観光客も少なく同じ価格帯でも売り上げは低い」と訴えています。

 香川県の事業者が申請したのは、最も低いもので「680円」、高いもので「1210円」への値上げです。四国運輸局によると申請で最も多かったのは10%から20%の値上げ、つまり710円から770円の間を求めるものだったということです。

 新しい運賃に関しては運輸局が事業者の収支などを基に検討し、2023年2月以降に適用される見通しです。

コスト削減と効率化、新しいサービスも

 苦しい状況が続く中でタクシー事業者は「効率化」や「利用者増加」のために新たなシステムの導入やサービスの提供にも取り組んでいます。

 ハロータクシーでは自社に加え、別のタクシー事業者1社の「配車」も請け負っています。「配車」を共同で行うことで人件費を抑えるとともに車両の効率的な運用にもつなげています。

(ハロータクシー/寺師大祐 社長)
「一つの配車室で扱う車両数が増えることで、配車の効率化が行えること、効率化することで、ドライバーの実車率が上がって賃金にもはね返ってくる。そういうメリットがあると思います」

 効率化だけでなく利用客の獲得に向けて、介護資格を持ったドライバーが買い物や病院に付き添ったり、お墓参りを代行したりとさまざまなサービスも打ち出しています。また、事前に登録した妊婦を素早く病院に送り届ける「陣痛タクシー」というサービスも始めました。

(ハロータクシー/寺師大祐 社長)
「運賃が上がるということは乗り控えにつながってくるかと思うんですけれども、お客様にわれわれがしっかりいいサービスをするというところでご理解いただきたいと思ってます」

 タクシーの運賃を巡っては岡山市の下電観光バスが8月、中国運輸局に運賃の値上げを申請しました。

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