偽の警察手帳に偽の逮捕状まで。警察官を名乗る詐欺があとを絶ちません。相次ぐ偽の警察官、どうやって見破ればいいのか元刑事に聞きました。
■実際のビデオ通話 一部始終
12月、1年で最も多くなる特殊詐欺。なかでも急増しているのが警察官を装う詐欺です。その被害額は、今年10月末時点でおよそ750億円に上っています。
私たちは、どう身を守ればいいのでしょうか。
実際にあったケースを元警視庁刑事・吉川祐二さんと見ながら詐欺の手口を探ります。
ある女性のもとに掛かってきた国際電話。自動音声の案内に従うと、携帯電話会社のカスタマーセンター「ヒラモト」を名乗る人物につながりました。
携帯電話会社“ヒラモト” 「携帯電話の不正利用・不正契約をされている可能性がある。心当たりがないならば、警察で被害届と無関係証明書を発行された方がいいと思う」
男は、福岡県警に電話をつなぐと説明します。
元警視庁刑事 吉川祐二さん 「カスタマーセンターから警察につなぐことはまず考えられない。なぜするのか?被害者を離さないため」
警察官? 「福岡県警本部。事件ですか、事故ですか」
電話口に現れたのは、福岡県警捜査2課のサトウマサルを名乗る人物。
福岡県警 捜査2課“サトウマサル” 「緊急対応として電話での録画・録音での事情聴取を受けてもらう」
そして突然、ビデオ通話にするよう誘導します。
警察官? 「サトウマサルです」
画面に映し出されたのは警察手帳。男は本物の警察官だと主張します。これが信用させるための手口です。
吉川祐二さん 「自分を(画面に)映し出すことによって警察官であることを信じ込ませようとしている。制服を見ることで本当に警察だと思わせる。警察がLINEをつなぐことはありません、絶対にないです」
そして男は事情聴取と称して、住所や家族構成などを聞き出します。
警察官? 「警視庁に照会して終了するので電話を切らずにお待ち下さい」
すると話は、あらぬ方向へ…。
警視庁の無線? 「別件にて捜査中のマネーロンダリング事件の口座関与のため、検察官から警告口座との記載あり。ただちに取り調べを行い、調書は検察及び警視庁に送信願います」
携帯電話の不正利用から、マネーロンダリング事件への関与へと膨らみます。
さらに、男は捜査には守秘義務があると説明。誓約書へのサインを求めてきました。専門用語や書類をちらつかせるのも詐欺の典型的な手口です。
吉川祐二さん 「マネーロンダリングと言われた側にとしては『すごいな、この人警察なんだ』と思わせる一つの手口。警察の捜査書類を見せられた時、これも気を付けなければならない。嘘っぱちだと思って下さい」
さらに、男は女性に…。
警察官? 「持っている(口座情報を)すべて教えて下さい」
捜査のために口座情報を教えるように要求。300万円を振り込むよう指示してきました。
吉川祐二さん 「一般の人からすると、警察という名前を出されただけで、どうしても引いてしまう。それを逆手にとった犯罪。本当に悪質な犯罪」
女性はお金を振り込むことはありませんでした。
さらに、警察官を装う詐欺では逮捕状を見せるケースもあります。
九州に住む30代の男性のもとにも警察官を名乗る人物からビデオ通話が掛かってきました。見せられたのは、逮捕状。
吉川祐二さん 「幼稚すぎる。手抜きすぎる」
見ればすぐに嘘だと分かるポイントがありました。
■元刑事指摘 見抜くポイントは?
今、急増する警察官を装った詐欺。
警視庁の警察官を名乗る人物から送られてきた偽の逮捕状です。見抜くポイントはあるのでしょうか。
吉川祐二さん 「警視庁の捜査一課からの電話だったが、この書類自体は千葉県警。手抜きすぎる」
警察官は警視庁を名乗っているにもかかわらず、逮捕状には千葉県警の文字。
吉川祐二さん 「逮捕状を逮捕していない人に事前にこのような書類を見せることはない。本当の事件なら(逮捕状)見せられた人は逃げる」
迷惑電話防止アプリなどを開発する会社は、詐欺にあわないための最大の対策は孤立しないことだといいます。
特殊詐欺対策のサービスを提供 トビラシステムズ セキュリティリサーチャー 柘植悠孝さん 「特殊詐欺は電話が入り口になる。知らない電話や不審な電話には出ない。偽警察官の手口として孤立化させる、周りに相談させない。それにハマるとだまされてしまうので、相談してほしい。迷惑電話や詐欺電話を自動でブロックしてくれるサービスもある。そういうものを活用するのも大事」