今回は、岡山市中心部の街づくりについて考えます。岡山市の表町商店街の千日前地区では、新しい市民会館、岡山芸術創造劇場「ハレノワ」の整備が進んでいて、建物は12月28日に完成します。半年後の2023年6月にはプレオープンを控えていますが、周辺を見ると、路面電車の延伸計画はストップ、道路の整備なども進んでいない部分があります。課題はどこにあるのか……。岡山市の街づくりについてお伝えします。
「照明が暗い…」完成間近、ハレノワ周辺の課題は?
岡山市の千日前地区で建設が進められている新しい市民会館、岡山芸術創造劇場「ハレノワ」。12月28日に完成する予定です。大中小の3つの劇場を備えるほか、劇場と一体となった分譲マンションも整備されています。
(岡山市表町商店街連盟/長谷川誠 理事長)
「ハレノワがオープンすることは、非常に大きな意味があります。岡山市として魅力が全体的に上がっていけば」
プレオープンは半年後の2023年6月4日。地元、表町商店街はハレノワの整備による「街のにぎわい」に期待しています。
(岡山市表町商店街連盟/長谷川誠 理事長)
「周辺各地でマンション計画、実際に建築が進められているってところで」
ハレノワから半径250mほどのエリアで、現在4つのマンションが建設中です。ハレノワの分譲マンションも合わせて、今後このエリアに住む人が増えることが予想されます。
(岡山市表町商店街連盟/長谷川誠 理事長)
「周辺に人口も確実に増えてきている。商店街に対する需要といいますか、また上がってくるんじゃないかと」
ハレノワが整備されている千日前地区の商店街は、アーケードを撤去。岡山市の計画では今後、電柱を地中に埋めて植栽を行うなどする予定です。工事費用は約2億2000万円で、半分を国の補助金でまかないます。
一方、整備が進んでいないものもあります。
(松木梨菜リポート)
「ハレノワのすぐそばの商店街です。下を見てみますと、カラー塗装がはがれています。また、商店街の照明も消えているんです」
ハレノワすぐそばの西大寺町地区では、商店街側が岡山市に対して、照明を明るくすることや舗装の改修などを要望しています。約60年前に建てられた「時計台」は、再整備のための撤去を要望しています。市の補助金を活用しての改修や撤去を望んでいますが、まだ計画にまで至っていません。
(岡山市表町商店街連盟/長谷川誠 理事長)
「いずれ時計台も撤去して、周辺整備もあわせて、商店街ならびに行政と一緒になってできていったらいいなと思います
路面電車の延伸計画なぜストップ? 専門家は苦言
この他にも、ハレノワのオープンを見据えて動いていたものがありました。それが「路面電車の環状化」です。
市は、ハレノワ近くの路線の延伸を早期に進めようとしていました。事業費9億円は、事業者と岡山市と国が3分の1ずつ負担する計画です。しかし、現在計画はストップしています。
路線を延ばすためには国の認可が必要ですが、事業者側の申請がまだできていません。事業者と市などの協議もストップしています。
岡山市は理由に、新型コロナによって事業者の運賃収入に影響が出ていることを上げています。今後、収入が回復すれば、事業者に申請を働きかけていきたいとしていますが、いつになるのかは不透明です。
この状況に専門家は苦言を呈しています。
(岡山大学大学院/中村良平 特任教授)
「まずは道路とか鉄軌道。基盤をまず整備して、それで土地の価値を高めていって、そこにいろんな利用施設ができてくると、というのが街がうまくできていくプロセスなんですけれども、先に建物・上物ができてるので、なかなかその段階で土地の値段も上がってますし、路面電車延伸するとなっても簡単にはできないですよね」
岡山市中心部では今、さまざまな建物の建設が計画されています。たとえばJR岡山駅前には、マンションやホテルなどが建つ計画で2026年度中の完成を目指しています。同じく2026年度には岡山市役所の新庁舎も建つ予定です。
街づくりが大きな転機を迎えているだけに、それぞれを結ぶ交通機関の整備が求められます。
「路面電車の環状化」から街の活性化に成功した都市があります。それが富山市です。
富山市では、2009年にJR富山駅周辺で路面電車を環状化。これを機に、沿線にマンションや新たな施設ができ、路面電車を利用する人も増えていきました。
富山市によると、環状化した後10年で利用者は「5割ほど増えた」ということです。
(岡山大学大学院/中村良平 特任教授)
「富山とか路面電車を中心とした街づくりで、中心部の人口が増えてたりしますので。たとえそれが民間事業者であっても、常に情報をやり取りして、お互い街づくりに協力していくと、そういう姿勢でやっていかないと。新しい施設ができたら、新しいインフラも必要だという意識が大事なんじゃないか」