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解体か再生か…揺れる旧香川県立体育館 民間団体が県の懸念に「反論」 事業性・安全性を説明

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 世界的な建築家、丹下健三が設計した旧香川県立体育館について、建築家らで作る団体が民間資金による「再生」を提案しています。

 この提案に対して香川県の池田知事は「事業の主体や計画が明確ではない。建物が地震で倒壊する恐れがあり、安全確保が急がれる」という2つの理由を挙げて解体を進める方針を変えていません。

 民間団体が26日、記者会見を開き、事業性や安全性について説明しました。入札手続きなどの差し止めを求める仮処分申請を裁判所に申し立てる方針を明らかにしました。

(記者リポート)
「記者会見にはオンラインも合わせて10人が登壇します。建築、ビジネス、そして法律と多彩なメンバーが揃いました」

 会見を開いたのは、地元建築家らが複数の企業の支援を受けて設立した「旧香川県立体育館再生委員会」です。

 7月、旧県立体育館の建物と敷地を県から買い取るなどして民間資金で耐震補強と改修を行い、ホテルなどに再生させることを提案しました。香川県が協議に応じないまま解体工事の入札を公告したことを受け、改めて会見を開きました。

県の懸念「事業の主体・具体性」

 26日の会見ではこれまで実名は出していなかった再生案を「主導」する企業として、東京や広島などで宿泊施設や地域開発を行う「Staple」の岡社長がオンラインで登壇しました。初期コストと調達、年間収支の見込みなどを説明しました。

 また高松で創業した乃村工藝社が建築や内装空間の活用法の提案や助成金の取得などを支援します。

(Staple/岡雄大 社長)
「その街の中で地域の誇りになってきた場所であったり、既存の建物の構造を出しながらそれを再生していくことが、ストーリー性が一番あって共感しやすいというところをわれわれとして強く思っているので」

県の懸念「安全性」

(記者リポート)
「旧香川県立体育館の前の道路は災害時の緊急輸送路に指定されています。県は地震によって建物が壊れ、そのがれきによって道がふさがれることを懸念しています」

 香川県は2012年度に行った耐震診断の結果、大地震の際に建物を支える柱や地下の支持杭が持たないこと、屋根のコンクリートが落下する恐れがあることなどから「解体を先延ばしできない」としています。

 26日の会見では、建築構造の専門家らが旧体育館では一般的な鉄筋コンクリートよりも高い強度のものが使われているなどと説明し、建物や屋根全体が崩壊する危険は想定されないと指摘しました。

(構造家/斎藤公男 日本大学名誉教授)
「地震によってケーブルが切れて崩壊して地面にばらまくというようなところに話がつながっているということを一度払拭してもらいたい」

 25日の記者会見で香川県の池田知事は、2012年度以降、新たな耐震診断などは行っていないことを明らかにしました。

(記者)
「災害に絶対はないものの、根拠に基づかずに『古くなったから危険』ということを言うっていうのは、いたずらに周辺住民の不安をあおったりとか、ただ急いで解体するための理由付けにしているんじゃないかとも考えてしまうが」

(香川県/池田豊人 知事)
「いたずらにあおるということは決してありません。繰り返し繰り返し、これからも県民の皆さんには安全性確保のためのやむを得ない判断ということについても、お話をしていきたいと思っております」

 解体工事業者を選ぶ一般競争入札は、9月2日から4日に受け付けられます。

 再生委員会は、香川県と県教委に協議の時間を設けてもらうため、入札手続きなどをいったん停止するよう求める「仮処分申請」を近く高松地裁に申し立てる方針を明らかにしました。

(旧香川県立体育館再生委員会/長田慶太 委員長)
「議会があって立法と行政があって、司法があって僕らは全部に働き掛けた状態になると思うんですよ。ですからどこが本当に明確な意見を持って物事に異議を唱えるかどこに風穴が開くかがわからない状態での記者会見になっている」

 香川県と県教委は、「再生委員会から申し入れがあれば協議には応じるが、解体スケジュールを変えるつもりはない」としています。

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