防災の話題をお伝えする「こつこつ防災」。今回は「文化財」の防災について取り上げます。4月、国宝の本社殿などがある岡山市の吉備津神社で新しい消火設備のテストが行われました。
岡山市北区の吉備津神社。約600年前の室町時代に建てられた本殿と拝殿は国宝に指定されています。
(吉備津神社/藤井崇行 宮司)
「境内の防災関係を新たにいたしましたので、今回は放水の試験をしたわけです。炎を感知すると自動で放水されるようになりました。(今までより)何倍もパワーアップしたかと思いますね」
これまで境内の消火設備は約50年前に設置した消火栓だけでした。そこで、2021年の8月から国の補助金などを利用して、消火機器を含む防災設備を更新する工事に取り掛かりました。総工費は約2億8000万円です。
準備が整い放水試験が始まります。国宝の本殿と拝殿を取り囲むように設置された4台の放水銃から一斉に水が放たれます。あっという間に本殿と拝殿に水のアーチが掛かります。
1台の放水銃からは1分間に700リットルの水が噴き出し、約30メートル先にまで届きます。
(吉備津神社/藤井崇行 宮司)
「予想以上に水量も多くてパワフルで、非常に安心したところです」
さらに、放水銃には最新の機能が備えられています。火災時に「炎」の位置を赤外線センサーが検知。放水銃と連動してノズルの方向を自動で制御することで「炎」をピンポイントで消火します。
国の「防火対策ガイドライン」によると、この放水は50分以上連続で行えるようにすることが求められています。
建物を覆う迫力ある水のカーテン。文化財を守る放水試験は無事終了です。
文化財を巡っては2012年に岡山市の金山寺で起きた火災で、国の重要文化財に指定されていた本堂が焼失しました。
(吉備津神社/藤井崇行 宮司)
「万が一のことも考えて取り組んでおることですけど、ご本殿なんかは国宝にも指定されていますのでね。将来の日本人、また世界の人々に伝えていく、というところが我々の務めかなと思っております」