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【特集】ハンセン病療養所で入所者遺族らがシンポジウム 身近な人権問題に理解を 岡山

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 ハンセン病をめぐる差別・偏見の歴史を通じて、身の回りにあるさまざまな人権問題に理解を深めてもらおうと3日、瀬戸内市にある国立ハンセン病療養所で、入所者の遺族らによるシンポジウムが開かれました。

(長島愛生園 入所者遺族/木村真三さん)
「やっぱり人権問題って、ただハンセン病だけではないと思うんですよ。ハンセン病の過去を知ることによって、自分たちが思い付くこと、心当たりがあるようなこと、それをつなげていける場ではないかと思っている」 

 3日、瀬戸内市の国立ハンセン病療養所「長島愛生園」で開かれたシンポジウムです。

 入所者の遺族、木村真三さん。ハンセン病を患っていた大伯父の仙太郎さんは、1939年に入所し、2年後に55歳で亡くなりました。

 現在、長島愛生園では木村さんの希望により、本来は遺族や医師だけが見られる仙太郎さんのカルテや写真、解剖録などを一般公開しています。

(長島愛生園 入所者遺族/木村真三さん)
「葬り去られてなかったかのようにされること自体が、僕は差別だと思っている。生きていた人がいて、苦しんだ人がいるんだというその気持ちを家族以外の人たちに知っていただいて、生きた証が消えてしまわないようにするために何をすべきかという一つのテーマとして公開を考えました」

 ハンセン病は感染力が非常に弱く、戦後には治療法も確立されましたが、国は1996年まで約90年にわたって強制隔離政策を続けました。そのため「ハンセン病は恐ろしい病気だ」という誤った認識が社会に広まり、入所者や家族はいわれのない差別・偏見に苦しみました。

 療養所の納骨堂には、引き取り手のいない入所者の遺骨が納められていて、その問題は今もなお根深く残っています。 

 シンポジウムでは、木村さんの活動を追ったドキュメンタリーも上映されました。

 木村さんは、身内にハンセン病患者がいたことを長らく心に秘めていましたが、仙太郎さんが長島愛生園にいたことをつきとめ、引き取った遺骨を故郷のお墓に納めました。

 放射線衛生学者として、福島で原発事故の被ばくに関わる調査を続けてきた木村さん。ハンセン病患者に対する差別・偏見と、被ばくの風評被害を受ける人たちの姿を重ね合わせ、解剖録の公開を決めました。

(長島愛生園 入所者遺族/木村真三さん)
「(福島で)若い女性が直接訴えてくるんですよ。『先生、私は結婚していいんですか?』『子どもを産んでいいんですか?』と言うんです。こういった問題を『知らない』で済むのではなくて、知って自分事にするということが重要だと思って、勇気をもって話をする」 

 シンポジウムには、1948年に14歳で入所した中尾伸治さん(88)も参加し、当時の記憶を語りました。

 話題に上がったのは、仙太郎さんが入所した時代から使われていた収容桟橋です。

(長島愛生園 入所者/中尾伸治さん)
「私もあの桟橋に上陸しました。降りたのは僕一人。ついてきた職員や先生は、職員桟橋のほうへ行かれた。そこで区別をされた。それからだんだんとハンセン病患者を押し付けられていくような感じ。本当に人間扱いされていたのか、病気を治すために療養所をつくったのではなくて(患者を)撲滅するためにつくった療養所であると思っている」

 また、長島愛生園には仙太郎さんを含め、1834人の入所者の遺体を解剖した記録が残っています。カルテなども含めて、歴史を物語る資料をどのように残していくのかが課題となっています。

(長島愛生園/山本典良 園長)
「解剖録を隠すことはできたんです、でも今回皆さんにお見せしました。(仙太郎さんは)ハンセン病の治療を全然していません。ハンセン病療養所なのにハンセン病の治療をしていないなんて、ありえないでしょう。でもこれは見せないと、何も起きない、何も始まらないと思って見せました」

 これまで、長島愛生園でカルテなどの開示を求めた遺族は木村さんだけでしたが、山本典良園長は、2人目の申し出があったことを明らかにしました。

(長島愛生園/山本典良 園長)
「仙太郎さんと同じ時期ぐらいに亡くなられた方の、女性の方なんですけどね、(遺族が)カルテと解剖録の開示をしてほしいと」 

(長島愛生園 入所者遺族/木村真三さん)
「仙太郎のことを開示したからこそ、2人目が出てくれたと思えるんですよ。それを見て言っていただいた人が一人でもいたら、仙太郎自身も僕の心も救われたかなということで、本当に心の底からよかったな」

(参加者は―)
「私も、ちょっとでも周りの人とかに発信して、みんなが住みやすい世の中をつくっていけたらと思う」
「本当に悲惨だった過去を未来の子どもたちとか、人々にも知ってほしいと思う」

 木村さんは、このシンポジウムをスタートとして、今後も差別・偏見の解消に向けた活動を続けたいと考えています。

(長島愛生園 入所者遺族/木村真三さん)
「ただ単に、解剖録は生きた証というのではなくて、その中の時代的背景が明らかになった。初めてこれはやはり人権問題につながるのではないか、そういったことまで見えてきたのは、重要な発見だと思います。遺族として自分をさらけ出す、仙太郎という人の写真も全部出すというのは非常にハードルが高かったんですよ。それをあえて出すことによって、人権問題というのはいっぱいあるんだということを気づいてもらうきっかけになると思っています」

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