暮らしに密着した経済の話題を取り上げる「暮らし×経済」です。今回は「高騰が続くコメ」です。
在庫があるのになぜ高値?
岡山市東区の農園では毎日、新米の出荷作業が行われています。今シーズンは当初、夏の猛暑の影響による高温障害で収穫量が減るとみられていました。
(一所懸命農園/岩本英隆 社長)
「高温障害ありましたけれども、そこまで大騒ぎするほどじゃなかったですね。(できは)平年並みぐらいですかね」
さらに、2024年のコメ騒動を受け、この農園では今シーズン、作付面積を約5%増やしたため出荷量も昨シーズンと比べ数%増えています。
(一所懸命農園/岩本英隆 社長)
「今年はおコメが高いというのが分かっていたので、いくつか増やそうかと思って(作付面積を)増やしています。おコメが高いので増やしているところが多いと思いますけどね」
生産は順調に見えますが、収穫量の増加で卸業者などから農家さんにこんな話も出ているそうです。
(一所懸命農園/岩本英隆 社長)
「もう足りたので今年はいらないというところも出てきているみたいな話は聞いていますけどね。日本全国おコメを増やしているのでこうなることは分かってましたし。コメがあふれてきているんで取引価格も少しずつ安くなっているよっていう情報は入ってきてますね」
農林水産省によりますと、2025年産のコメの生産量は約748万tと予想されています。2024年産と比べて68万5000t増えています。
一方で食べる量、需要量は最大で711万tと見込まれていて、5%ほど供給量が上回りコメ不足と言われていた状況からは脱却しそうです。
今後価格は下がる?
この需給バランスにより価格は下落しそうですが、現状は?
(松木梨菜リポート)
「岡山市内のスーパーでの店頭の販売価格をみてみますと、4600円~4700円ほどで販売されています」
(グランドマート/岡本和恵 取締役)
「新米になると卸さんによって5kgあたり100円~500円銘柄によって値上がりの話がきてまして。一部の業者さんは動きが悪いと銘柄によっては下げてもらえるものもあるんですけど、大幅な値下げは当社には届いてないところですね」
農林水産省によりますと、11月3日から1週間の全国のスーパーのコメの平均販売価格は5kgで4316円と前の週より81円上昇し、2022年3月の統計開始以降、約半年ぶりに「最高値」を更新しました。
専門家「卸業者が高い値段で買い付けているのが原因」
生産量が上回っている状況にも関わらず、なぜ「最高値」となっているのでしょうか。コメの価格を研究する専門家は、その要因の一つとして2025年ならではの事情をあげます。
(ニッセイ基礎研究所/小前田大介さん)
「もともと集荷競争になることを見込んで卸業者が生産者から高い値段で買い付けているのが原因と思っています。在庫は積み上がりつつ、卸としては高い値段で仕入れているので自身の会社の儲けを減らすことになるので、損を被ってでも出していくのかどうかってところになってくるのかなと」
在庫はあるものの価格が高いのは、根本に2024年から続く「コメ不足」が影響しているようです。
では今後どうなるのでしょうか。農林水産省が10月に公表した玄米60kg当たりの相対取引価格と民間在庫量の推移です。この相対取引価格とは、JAなどの集荷業者と卸売業者の間で取引される価格のことです。
それぞれの年の6月末時点の民間在庫量は2025年と2024年がやはり少なく、相対取引価格もこれまでにないほど上がっています。
2026年は2025年の約1.5倍にあたる量の民間在庫が確保できる見通しで、それによって価格も下がるのではないかと農水省は分析しています。
実際に専門家も5kg当たりの平均販売価格が2026年1月には4000円前後になるのではないかとある程度は下がる見通しを示しています。
年始に食べる「餅」も高騰
一方で、年末年始などに食べる機会が増える「餅」は、高騰しているようです。岡山市東区の農園では―
(一所懸命農園/岩本英隆 社長)
「ココノエモチっていうもち米です。今年は高級ですよ、餅が。もち米つくる人が少ないから。みんな主食用が高いのがわかってるからそっちをつくってもち米をつくらなかったから少ない。(業者も)全然ないって言ってましたね」
スーパーでは餅の販売価格が2024年に比べて約1.3倍になっていました。
(買い物客は―)
「焼いておしょうゆつけて食べたりとか。年末もっと高くなるってことですか。ちょっと困りますね」
「正月は絶対食べますし、餅自体が好きなので。大変かなっていうのはありますね」
年末にかけて価格はさらに上がりそうです。
(グランドマート/岡本和恵 取締役)
「(年末にかけ価格は)餅の加工品は1.5倍ぐらいだと思いますけど、もち米は2倍になるんじゃないかと言われて。(卸業者に)年末に量がそろえられるかどうかも言われているところもありますね」
今シーズンは農家が主食用米を主力にして作ったことから、もち米の収穫量が減りそうで、せんべいなどの菓子類の価格にも影響が出るかもしれません。
(2025年11月19日放送「News Park KSB」より)